ad:tech tokyo 2010を終えて その2

「次世代広告代理店のストラテジー」のセッションで消化不良に感じていたところを、こういう話をしたら良かったかな、という感じた点を、以下、挙げてみたいと思います。

Twitterで語られていたことや、記事を見る中で、こちらの頭の中もいろいろ整理されてきたました。もう少し、業界全体をもりあげる方向で語れれば良かったなぁというのが、率直な感想なので、ストラテジーというよりも、これから広告代理店がやらなくてはいけないことについて、4点ほど挙げたいと思います。
こういうことをやっていかないと、モデレーターの三井住友銀行の増子さんが提示された課題には応えていけない、と思うことでもあります。

1)業界内の人材流動性不足を解消する

米国では、広告・マーケティング業界の人材の流動性が高いです。Agencyの人が、広告主の宣伝・マーケティングの部署に転職する、あるいはその逆というのは、頻繁に起こっています。それ故、互いが何を期待しているのかを理解するのが容易なのだと思います。逆に日本では、終身雇用の社会慣習が色濃く残る中で、大手企業、大手総合代理店の間での人材交流というのは、これまでほとんどなかったと言っていいでしょう。
そのことを考えると、ad:techのような場は非常に貴重で、広告主、広告代理店、メディア、ソリューションプロバイダーのそれぞれが一つのところに集まり、意見交換ができるというのは、かつてなかったことだと思います。 しかし、今後デジタルの世界では、人材交流がもっと進むのかもしれません。また、FacebookやTwitter上で、広告主とAgencyの人がつながり、対話するのも、非常に多く見受けられるようになりました。こうした変化をAgency、広告主双方がうまく自社内にとりこむことが重要だと思います。

2)事業への理解度を高める

広告主と広告代理店が対等にパートナーとしてつきあっていくためには、相互理解が不可欠ですが、最近、広告代理店側がもっと努力しなくてはいけないと思うのは、広告主の事業内容についての理解を高めることだと思っています。
これは、広告主の中では、次第に従来の「広告宣伝部」というものから、「マーケティング部」「○○事業部」というのが予算執行をするような時代になってきていると思うのですが、彼らと問題意識を共有するためには、表面的な表現やメディアのプランニングだけではなく、より深い事業への理解度が必要になってきます。
これは一朝一夕でできるものではなく、業界知識や、その広告主特有のビジネス慣習など、手間暇をかけて理解しなくてはならないことだと思います。
もちろん、広告主側も、キャンペーンに対する斬新なアイディアを求める、というような局面もあると思います。この場合は、むしろ自社のことをあまりよく知らない、フレッシュなアイディアが好まれることも多々あります。ただ、私は、これは一時的なきまぐれにしか過ぎないのだと思います。長い目で見たときには、パートナー足りうる関係を築けることが大切ですし、米国と違って、短期的な成果を求めすぎない日本に置いては、なおさら、そうあるべきだと思います。
広告主側にも、一定の我慢をお願いする局面もあると思いますが、その結果として、中期的に共通の利益につながるという認識が持てれば、それも許容されうるのではないか、と思います。(広告主の皆さん、どうでしょう?) しかし、Agency側としては、もし事業理解に対してスピードを求められるのだとしたら、外部から経験者を雇うしかありません。これがどのくらいスムーズにできるかですが、1)であげたポイントが影響してくると思います。

3)テクノロジーこそ最重要課題

広告代理店が取り組むべきこととして、テクノロジーに強くなる、ということは、最重要課題だと思います。
90年代以降、ITの重要性が語られ、あらゆる産業の中にITが入り込んでいった中で、マーケティング分野というのは、非常に入り込みにくい分野でした。
マーケティングの場合、システム投資の予算が少なく、また企業ごとの独自性が高いために、共通化されたシステムでは対応ができず、限られた予算の中では何もできない、ということが、一般的であったためです。ところが、昨今のクラウドに代表されるように、システム開発は様変わりし、開発よりも利用するもの、というトレンドになってきています。
こうした中で、マーケティングの分野にITがどんどん入ってきています。 その一方、広告主の中では、広告宣伝やマーケティング部門にITに長けた人があまりいない、というのが実情で、また社内のIT部門にサポートを求めても、マーケティング分野というのが、これまであまり関わったことが無く、話がうまく通じないということがしばしば起こっています。そうした中で、広告代理店がITに強くなり、それを使いこなすサポートを行うことというのは、大きなチャンスでもありますし、またそれができなければ、大きなリスクにもなるでしょう。 米国のDigital Agencyでは、社内にエンジニアを多く抱えている会社が少なくありません。
これは、TraditionalなAgencyとの差別化要素にもなっています。

4)データドリブンなマーケティングへ環境整備

データの活用については、日米で大きく差がついてしまっています。
その中で、あえてメディアの部分にフォーカスしますと、米国では、大手広告主においては、ネット広告の大半で、第三者配信を利用し、それによって得られるデータを活用するというのが当たり前になっていますし、その延長線上に、Demand Side Networkの話も出てきています。ところが、日本に置いては、第三者配信自体がまだ浸透していない状況で、メディアの分析や最適化をするにも、非常にアナログな作業が付きまとう状況になっています。
中途半端にデジタルになっているというこの状況は、非常に危うく、またマーケティングの発展を阻害しているのではないかとすら感じます。これについては、広告主と広告代理店がともに第三者配信の普及を推進すべきだと思います。 3メディア(日本流にはトリプルメディア)時代において、3つのメディアを俯瞰してプランニングするということが求められる時代になってきたわけですが、そのためにも、Owned、Paidのデータを連携して分析し、さらにはEarnedを加味していく(Earnedの場合、まだ定量的な分析手法が良く見えていませんので)ということが必要で、第三者配信はそのための重要な一歩だと思います。
データ活用のためのツールも次々と新たなサービスが登場しています。利便性も高まり、従来見えにくかったデータが見えるようになることで、メディアの新たな価値が発見される面もあります。その意味では、ツールを使いこなし、その中から意味を汲み取る力というのが大切になりますし、そうした人材を育成しておくことが、広告代理店には不可欠になってくると思います。

ということで、いろいろと、書き連ねてきましたが、もともとある程度頭の中で上記のようなことをイメージはしていたのです。
しかし、いざパネルとなった時に、なかなかうまく切りだすことができませんでした。私の経験不足を反省。もっと精進せねば、と決意を新たにした、ad:techでした。