CES / NRF 2020

 

毎年1月は、米国でCESとNRFという2大イベントが開催され、これらのイベントでの、新しい企業の発表が、この1年の業界のトレンドを占うものとして、世界中の注目を集めています。
特にデジタルがどちらのイベントにおいても中心的なテーマになって以降、注目度は高まるばかりで、企業側も自身の業界イベントよりもこれらのイベントにおいて、新しい取り組みやイノベーションを紹介するのが一つの流れになってきたように思います。

IsobarもUSオフィスからCESのレポートが出されていますが、そこから今年のトピックスをご紹介しましょう。

デジタルアシスタンスの進化
Siri, Alexa, Googleにリードされる音声アシスタンスが、プライバシー問題を回避しながら、さらにパーソナライズされた顧客体験の提供に向けて進化。Samsungは、”Artificial Human(人工人間とでも訳しましょうか?)“というコンセプトでNEONというアバター型のデジタルアシスタンスを紹介、BallieというStarWarsのBB-8のようなアシスタンスロボットとともに、これからのアシスタンスのあり方を提示しました。

ヘルステックの新たな領域
バイオメトリックス(生体認証)が、ウェアラブルの世界だけではなく、バスルームのマットやアダルトグッズなどにも活用され、新たな広がりを見せている(アダルトグッズ業界は、今年初めてCESでの出展を認められ、イノベーションアワードを受賞した企業も現れました)。またデータ収集と分析の進化により、より深い体のコンディションを理解するサービスが登場している。寿命を示唆することはできないが、健康年齢に関する情報を提供するサービスや、パーキンソン病など脳に関連する疾患の患者に向けたアシスタンスサービスが登場している。

拡張するVR/AR
Hapt VR Glovesは、VRに映像とサウンドだけではなく、触覚もバーチャルに体験できる機能を付加。製造業でのトレーニングや製品テスト、医療教育など業務プロセス内での利用がまず検討されています。Panasonicは、VR製品自体のデザインの刷新を試み、ヘッドマウントディスプレイをより使いやすく、見た目にも「異様さ」がない、軽量な製品を発表しました。こうした取り組みから、5Gという追い風を受けつつ、VR/ARが、いよいよ広がりを見せていくものと思われます。

これ以外にも、折り畳み可能なディスプレイがモバイルデバイスだけでなく、ラップトップにも広がるとか、Uberとヒュンダイによる「空飛ぶタクシー」の紹介や、トヨタやソニーによる新たな自動車産業の取り組みなど、色々と報道されているように、今年も様々な企業から将来に向けたビジョンが発表されました。

英語版レポート
Isobar CES 2020 Recap Report

日本語版レポート
Isobar CES 2020 Recap Report

Samsung at CES

 

流通業界の世界最大のイベントで、今年も4万人が集まったNRF
一方、NRFですが、CESほど日本での知名度はありませんが、流通業界の世界最大のイベントで、今年も4万人が集まったそうです。デジタルシフトは、この業界でも必然の流れで、今年のキーノートスピーチのトップバッターは、MicrosoftのSatya Nadellaでした。彼のスピーチによれば、米国のGDPの31%は、リテールに関わるものであり、巨大なデータポイントです。

NRFにおいても、マーケティング業界同様、Experienceに大きく注目が集まっています。Customer Experienceの向上のために、CDP(Customer Data Platform)の活用と、Headless Commerceアプローチによる、チャネル構築がトレンドになりつつあります。そしてまた、データとAI活用も大きなテーマです。

StarbucksのKevin Johnson CEOは、Keynoteの中で、Deep Brewという自社のAIプロジェクトを紹介しましたが、”Third Place”を標榜するStarbucksにとっては、デジタルとブリック&モルタル(リアルの店舗)の共存が長期的な戦略であり、例えば、バリスタが接客に集中できるように、AI活用によりスタッフのワークシフトの最適化や、自然言語解析により、POSレジでの入力業務を削減したりすることで、人的オペレーションによる顧客エンゲージメントを高めることを目的にデジタルを活用しています。そして、社内の意識改革を進め、新たなデジタル施策の導入サイクルを早め、idea-to-action in 100 daysを目指しています。実店舗を持つ、日本のリテール業界においても、こうしたStarbucksの考え方は、大いに参考になるかと思います。

優れたCustomer Experienceを実装するためには、データの活用が不可欠ですが、大手流通企業では、データサイエンティストの採用に積極的で、Targetでは、1年間に千人を超えるデータサイエンティストが採用し、今後も同規模の採用を続けるとのこと。日本では考えにくいスケールの話ですが、デジタルと実店舗のあらゆる領域でデータ活用が必要となる現在、他社に先手を打ち、社内カルチャーを変えていくために、社内体制の強化が不可欠になっています。

顧客体験のペインポイントの解消という観点から、米国では、返品体験の改善と、BOPIS(Buy Online Pickup in Store)のようなデジタルと実店舗の融合したサービスにフォーカスが当たっています。前者は、日本においてはそれほど課題になっていませんが、後者については、日本においても新たな顧客サービスの提案として今後広がっていくものと思います。米国では、75%のショッピング体験が、何らかの形でデジタルから始まると言われており、そこから実店舗への体験をシームレスにつなげていくことが、顧客満足度を高めることになります。Walmartでは、デジタルチャネルとIoT, ジオフェンシングなどの技術要素を組み合わせ、この実現に務め、大きな成功を収めていることが、よく知られています。顧客の日常の購買体験をシームレスに、フリクションレスに仕立てていくことに、様々なテクノロジーが導入され始めている、米国企業の先端ケースが数多く紹介されたNRFですが、CESだけでなく、来年以降も注目をしていきたいイベントです。

英語版レポート
Isobar NRF 2020 Recap Report

日本語版レポート
Isobar CES 2020 Recap Report

NRF  Satya NadellaのKeynote Speech

MaaS推進の前に日本が目を向けるべきこと

このところ「MaaS(Mobility as a Service)」への関心が一層高まっているように感じます。鉄道会社と航空会社の連携や、IT企業と自治体、IT企業と自動車メーカーの連携といったニュースが立て続けに報じられているのを目にした方も多いでしょう。

国内では、トヨタ&ソフトバンクの「MaaS連合」が注目を集めるなど、熱を帯びるMaaSですが、私たちも、この分野にどう貢献できるか、考えていく時期に来ていると考えています。

MaaSの取り組みは、世界中でおきていますが、日本の動きは、シンガポールやスウェーデンといったこの領域における先進諸国に比べて、「遅れている」と言わざるを得ない状況なようです。

北欧の大学の研究によれば、MaaSを実践するステップは、交通事業者間による「情報の統合」に始まり、「予約・決済の統合」「サービスの融合」「政策との統合(社会課題解決との統合)」へと発展していくと考えられますが、日本は、まだ最初の段階。しかし、諸外国の中には、ヘルシンキのWhimのようにサービスの融合レベルまで実現しているものもあります。

では、日本がこの分野を活発化していくにはどうすればいいか?

これを考える前に、“足下の状況”を見てみましょう。

 

CX(カスタマーエクスペリエンス)を良くしようという発想が感じられない日本の予約サイト

至近の例として、私が体験した“残念なCX”についてお伝えしましょう。

この夏、休暇をフランスで過ごそうと、空港に向かうべく交通機関のチケット予約をしようとした時のことです。

まず、パソコンで交通機関の予約サイトに飛び、チケット予約について調べてみました。すると「チケットレス申し込みがおトク」というリンクが。確かに、価格は200円ほど安く設定されています。「これはいい!」とクリックすると、なぜかこの交通機関のサイトから別の購入サイトに遷移することに…。

では、その購入サイトでそのまま席の予約ができるかというと、できないのです!

実は、割引はスマホからの予約のみ。もちろんそのような説明がサイト上にはあるのですが、情報量が多いサイトゆえに、そのことに簡単に気がつくのは難しそうです。結局、スマホから検索し直して、チケットレスで予約はできたのですが、正直、残念な気持ちになります。

この交通機関のサイトは少なくともこの10年、前述のように自社のサイトとチケット予約のサイトが統合できていない状態が続いています。また、ユーザーIDの統合もされておらず、利用者にとって非常に複雑な仕様になっています。これでは良質なCXをもたらすことはほぼ不可能と言えるでしょう。

「日本人である私がたくさん疑問を感じる仕組みなのだから、海外からのお客様がこの交通機関を使おうとすると、さぞ大変な思いをするだろうな」と、英語版も見てみることにしました。

すると、この交通機関のTOPページにはびっくりするほどたくさんの情報が盛り込まれていました。これではすぐに知りたい情報にたどり着くのは困難なはず。しかも、チケットに関しては「券売機で買える」という情報だけが…。なぜ、オンラインで購入できないのか、首をひねりたくもなります。

実際、私は、いつも空港でたくさんの外国人観光客が購入窓口や券売機に並んでいるのを見かけます。かつてその列に並んだこともありますが、日本人だけの列と違い、券売機の前で迷う人も多数いて、思いのほか時間がかかり、乗りたい電車を逃したこともありました。


Google Mapさえ使えれば、すべての交通手段の予約が可能

さて一方、フランスでの滞在中、モン・サン・ミッシェルまで足を伸ばそう、ということになり、パリからの行き方を調べてみました。

そこで、行き方をGoogle検索してみたところ、検索結果の1ページ目にはほぼオンラインチケット申し込みのリンクが揃っていました。これは、日本では見られないものです。

Google Mapの検索結果

 

「パリからモン・サン・ミッシェルへの道のり」検索結果 ほとんどが予約サイト

検索結果の中からひとつのサイトを選んで、チケット予約をしようとすると、そこではバスと列車がいっぺんに予約できるようになっていました。パリからモン・サン・ミッシェルまでは、ツアーバス以外は、鉄道とバスの組み合わせで行くのが主流のようで、利用する交通手段それぞれの予約を別々に行なうことを想定していた私は、この便利さには、感心しました。

検索結果の中から「RailEuropa」に遷移すると、日本語で予約が可能

その後調べてみると、このような便利なサービスはフランスに限ったことではなく、ドイツなどでも同様です。航空会社、バス会社、鉄道会社ほか、複数の企業が連携して利便性を高めることが、普通にオンライン上で実現されています。

またパリ滞在中、市内の移動にはGoogle Mapが欠かせません。そして行き先を検索すると、メトロなどの公共交通機関に加え、Uberや新興の電気スクーターのLIMEといった代替手段も提示され、アプリへのリンクで予約もスムーズにできるようになっていました。

列車とバス以外の交通手段とその予約も可能に

つまり、パリのような都市では「Google Mapが使えさえすれば、移動の心配はほとんどない」というわけです。

はじめに「海外では日本よりMaaSが進んでいる」と紹介しましたが、このように、すでに企業間の連携が具体的に始まっており、利用者がwebやモバイルで簡単にそのサービスを活用できる環境が整っているからこそ、取り組みがスムーズに進んでいるのかもしれません。

 

もう一例、フィンランドの「whim」を挙げておきましょう。

このアプリには、様々な交通手段の予約システムが統合されていて、自分が行きたい場所を入力しさえすれば、経路と交通手段の提案がなされます。もちろん、そこで予約も可能です。

「whim」のファウンダーは、長らく交通とITに関する様々なサービス開発に関わっていて、直前は産学官の高度道路交通システムのコンソーシアムの代表を務めていたとのこと。そのため、マイカー依存に陥っていたヘルシンキ市民を公共交通機関の利用へとシフトさせたいと考えていた中央官庁の協力も得られ、その大義のもと、利害関係が異なる複数の企業も好意的に参加してくれたのかもしれません。逆に、同サービスはグローバル展開を進めていますが、ステークホルダー間の利害調整がボトルネックになっているとの話も聞こえてきます。

 

現在の利便性に満足せず、CXの視点で考えることが求められている

では、再び日本の現状を見てみましょう。

こうしたサービスが有効に活用されるであろう都市部では、公共交通機関の利用度も高く、高いサービスレベルにあります。マイカー依存の問題という話も聞こえてきません。また、Suicaなど電子マネーによる公共交通機関の決済は共通化が進み、利便性も高い状況にあると思います。では、Maasのニーズはあるのでしょうか?

私たちの日常生活の顧客体験は、スマホとクラウドサービスによって日々変化を遂げています。その中で、顧客が期待するCXのレベルも日々上がっていると言えます。海外旅行でオンラインサービスの便利さを体感したら、日本でも同様のサービスを期待するのは、当然のことです。Suicaなどオフラインでのサービスレベルが高いだけに、オンラインをベースとしたCXがイマイチなのは、なんとも残念なことであります。ハード偏重でソフトが出遅れた他の産業に似た印象を受けます。

そしてまた、観光立国を目指す日本であれば、グローバルスタンダードなCXを公共交通機関で提供することは、必須の社会課題だと考えるべきではないでしょうか?

人口減少が進み市場の縮小化が避けられない現状を前に、新たな収益モデルを見付けなければならない、という環境の中で新たな価値を生み出す為にも、取り組むべきテーマだと思います。

私たちは、こうしたところに「CX目線でMaaSの取り組みを加速させるにはどうすればいいか?」を提案することで、企業の課題を解決し、社会に貢献できるかもしれないと考えています。

Internet of Things (IoT) 時代の到来

今月頭、6回目を迎える、Razorfish Tech Summitに参加してきました。
元々、テクノロジー部門のためのコアな会議なので、これまで私も参加したことは無かったのですが、今回は、もう少し裾野を拡げて、エンジニア以外の人にも分かるカンファレンスへという方針のもと、初参加してみました。
会議のテーマは、Internet of Thingsでした。

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クラウドの威力

ここ最近、コーポレートサイトの案件で、インフラにクラウドが採用される案件が増えてきました。クライアントからも、インフラ提案の中に、クラウドの話を必ず入れてくれ、と指示されることもあり、ようやくWebの世界でもクラウドが市民権を得つつあるな、と感じます。

といっても、たとえば、インプレスさんのWeb担当者フォーラムでは、クラウドは、「レンサバ」(レンタルサーバ)のカテゴリーに入っていて、まだまだ業界標準ではないのだな、と感じることもあります。

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Facebook、スマートデバイス、第三者配信

先月、日本マイクロソフトさんの協力も得て、当社初のプライベートセミナーを開催しました。主に当社と取引のあるクライアントの方々をお招きしたセミナーでした。当社と取引があっても、意外と当社全体のソリューションを知っていただくことができていなくて、特に、ソーシャルやスマートデバイスなどの新しい分野でのサービス内容については、まだまだご案内が十分ではありませんでした。そこで、今回は、比較的当社の新しいサービスをご案内しようということで、Facebook、スマートデバイス、第三者配信にフォーカスして、プレゼンテーションをさせていただきました。
反応は上々で、もっと詳しく説明してほしい、というお声掛けを、数多くいただくことができました。

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2011年版 Razorfish 5

先月、マーケティング領域における、テクノロジートレンドを解説した、Razorfish5というレポートの2011年版が発表されました。 今回は、独立したサイト上で、レポートが公開されています。

http://www.razorfish5.com/

CEOとCTOによる前文では、とにかく変化のスピードがかつてないほど速くなっているのだ、その波にのるべきだ、と強調されています。
前回同様、今回も5つのテーマに焦点を当てています。その一端をご紹介しましょう。

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ad:tech tokyo 2010を終えて その2

「次世代広告代理店のストラテジー」のセッションで消化不良に感じていたところを、こういう話をしたら良かったかな、という感じた点を、以下、挙げてみたいと思います。

Twitterで語られていたことや、記事を見る中で、こちらの頭の中もいろいろ整理されてきたました。もう少し、業界全体をもりあげる方向で語れれば良かったなぁというのが、率直な感想なので、ストラテジーというよりも、これから広告代理店がやらなくてはいけないことについて、4点ほど挙げたいと思います。
こういうことをやっていかないと、モデレーターの三井住友銀行の増子さんが提示された課題には応えていけない、と思うことでもあります。

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ad:tech2010を終えて

はじめてパネリストとして参加した、ad:tech tokyo 2010が終わりました。

「次世代広告代理店のストラテジー」というセッションだったわけですが、事前にいろいろと考えていたにも関わらず、なかなかうまく話しきれず、十分消化できないまま、エンディングの時間を迎えてしまいました。
このセッションに対してだとおもわれるtweetもいろいろ拝見してみて、広告代理店の抱えている悩みを共有するにとどまってしまい、聴衆の期待にはこたえられなかったなぁと反省。
もう少し業界の明るい展望を示すことができたら良かったのですが、言葉足らずでした。 ただ、週明けに、出社して、いろいろ周囲に話を聞いてみると、セッション自体は好評でした。
ad:techは答えを提示するところではない、と、どなたかのTweetにありましたが、悩みを共有しつつ、考えるヒントを与える場には、なっていたのかな、と、少しほっとしました。

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Razorfishのクライアントサミット

昨日・今日と、Bostonで開かれている、Razorfishのクライアントサミットに参加してきました。
これは、年に1回、クライアントを招いて、事例やソリューションの共有をはかる会議ですが、大変に盛況でした。
私は今回が初めての参加ですが、参加しているクライアントも100社を超え、一昨年からの不況を脱したかのように、参加者が多かったそうです。  

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