Service Design Network Conference Japanに参加して

5/11に、日本で第一回目となる、Service Design Networkのカンファレンスが開催され、当社も協賛をさせていただきました。私自身も、実際カンファレンスに参加して、大変いい刺激になりました。

当社でも、企業のウェブ構築の仕事を長らくやっておりますが、最近は、企業からの情報発信支援だけでなく、カスタマー向けのオンラインサービスの構築支援で企画段階からご一緒させていただくような案件や、また実際の店舗でのIT活用におけるインターフェイスの設計案件に関わらせていただいていることから、企業側のサービス設計に対する知見をもっと深めたいと思っておりました。
折しも、4月にサービス学会という新たな学会組織がスタートしたようですし、今回のService Designも企業の事業開発の上で、一つのキーワードになってくるように思います。

カンファレンスでは、冒頭、Service Designの提唱者であり、このNetwork運営の中心人物である、Birgit Mager教授(Köln International School of Design)がキーノートで登壇し、Service Designの重要性について語りました。彼女に寄れば、製造業においては、デザインに対して、従業員一人当たり3,270EUROの投資を行なっていて、41%の企業がデザインを不可欠な要素と認識しているのに対して、サービス業では、67EUROしか投資を行なっておらず、9%の企業しかデザインを不可欠だとは見ていないのだそうです。そして製造業では、デザインを重視している会社は、そうでない会社と比べて200%の成功を収めているというデータもある中で、サービスにおけるデザインは、まさにこれから重視して行かなくてはならないビジネスの要件の一つになっていくと思います。


また、Service Designは、社会インフラや公共サービスに置いても、重視されつつあるそうで、英国ではGovernment Service Design Manualを定めて、2014年から政府のオンラインによるサービスは、すべてdigital service standardsに準拠することになるそうです。実際、サイト(https://www.gov.uk/service-manual)をのぞいてみましたが、公共サービスに置いて、User Centerd Designを明確にうたっていて、市民のニーズを中心に考えるべきであることを冒頭に記しています。


今回、ケーススタディとして、日立製作所 デザイン本部の丸山幸伸氏から、東日本大震災における仙台市の避難所で起きた問題点を整理し、今後の避難所のあり方についてのモデルを提示するまでのプロジェクトが紹介されましたが、こうした社会問題の課題に対して、デザインの手法が寄与できることは、これからもっと広がっていきそうです。


SonyのMathew Forrest氏からは、Sony Tabletの事例が紹介されました。Customer Journeyにおいて、期待を創造する部分と、体験によってそれを満たす部分があり、このギャップが少ない事が、優れたユーザー体験である、として、 Tabletを使い始める時点でのExperienceを設計するにあたり、広告やウェブサイトなど様々なタッチポイントから醸成される顧客の期待を分析を行ない、それを満たすべく、パッケージのデザインがなされている、というプロセスについて紹介されました。

カンファレンスで最も会場内が盛り上がったのは、リクルートテクノロジーの岩佐浩徳氏による、「リクルートの動かす力」というプレゼンテーションでしたが、リクルートがこれまで行なってきたことは、まさにService Designである、ということで、じゃらんのケースから、「いちご狩り」や「鍵付き露天風呂」、そして最近の「雪マジ19」まで、様々な事例が紹介されました。そして、それらの事例が生まれてきたリクルートのカルチャーや、「リボン図」などのフレームワークが紹介されました。
この「リボン図」ですが、CustomerとClientを結んで、そこに収益を創出するというリクルートのビジネスモデルが、シンプルなフレームの中に見事に凝縮されていて、こうしたものが、個々の営業マンに浸透し、彼らのビジネスの根底にあるカルチャーになっていることに、感心しました。そこから、様々なサービスビジネスが生み出されていることを思うと、広告ビジネスに関わる者は、自分たちの業務を、一度このフレームで物事を捉え直してみることが新たな提案のヒントになると思います。

慶応義塾大学の武山教授からは、アカデミックな観点から、サービスデザインによるビジネスのリフレーミングということで、Service Designを取り巻く環境について整理がされました。

プロバイダー(製品/サービスの提供者側)は、自らのバリューチェーンから生み出される「交換価値」を提供するが、今の顧客は、自分たちのコンテクストの中で利用する際に生まれてくる「使用価値」の観点で製品/サービスを評価していて、プロバイダー側はこうした顧客の変化を正しく認識する必要に迫られています。顧客自身が、様々なプロバイダーから提供される、製品/サービスの要素(リソース)をインテグレートして利用する時代になっているわけです。
デジタル化がこれを押し進めている大きな要因で、デジタル化=脱物質化によって、資源の流動化、分離化がおこり、その結果として、資源が再結合されることで、資源のより望ましい組み合わせによる価値の実現が起きています。いわゆるプラットフォーム型のビジネスというのは、こうした環境下で生まれてきたビジネスモデルということになります。

これ以外にも、ワークショップやチュートリアルが行なわれ、様々な事例、講演や会場内の熱気から、今後、Service Designが製造業・サービス業とわず、顧客に対して優れたExperienceを提供するための不可欠な要素になっていくだろうと感じられた、貴重な1日でした。


Service Design Conference Japan 2013のウェブサイトはこちら