「VIVA TECHNOLOGY」レポート 〜主要テーマは、グローバル企業とスタートアップの協働と大手プラットフォーマーへのアンチテーゼ〜

5月16日から5月18日の3日間、ヨーロッパ最大級のTech系イベント「VIVA TECHNOLOGY」が今年もフランス・パリで開催されました。世界各国から12万人以上を動員した本イベントに私も足を運んでみましたので、現地の様子をレポートします。

VIVA TECHNOLOGYについて

「VIVA TECHNOLOGY」は、日本ではそれほど知名度が高いイベントではないかもしれませんが、たとえばマクロン大統領が通商大臣だったころから今もなお深くコミットするなど、フランスでは国の威信をかけた取り組みと位置付けられ、今年は12万人超の来場者を集める欧州最大のTechイベントです。

Tech領域のトレンドや新技術、企業の活用例が披露される 欧州最大級のTechイベント「VIVA TECHNOLOGY」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Tech領域のトレンドや新技術、企業の活用例が披露されるだけでなく、中心テーマのひとつであるスタートアップ支援の名の下、「NEXT EUROPEAN UNICORN AWARDS」と題した大型スタートアップの表彰が行なわれたり、ハッカソンでイノベーティブな発想を発掘する機会があったりもします。

訪れてみれば、業界関係者ならずとも大変刺激的な経験ができるでしょう。

https://vivatechnology.com/

 

国内外の政治家、業界を超えた名だたる企業、新進気鋭のスタートアップが一緒になって議論する場

本イベントは、最近の大型Techイベント同様、展示会とカンファレンスから構成されており、カンファレンス会場では、今年もたくさんのセッションが行なわれました。

ここでまず注目したいのは、登壇者のバリエーションの豊かさです。

たとえば、マクロン仏大統領がスタートアップの経営者たちと対談したセッションもあれば、カナダのトルドー首相が、SNSを介したフェイクニュースの拡散やテロを煽動するようなコンテンツで損なわれたネットの信頼回復に向けて、新たにDigital Charter(デジタル憲章)を制定したと発表するセッションも。また、フランスというお国柄か、セネガルとルワンダというアフリカの大統領が登壇し、eGovernmentについて語るといった光景も、フランスの過去の歴史と次のビジネスを見据えたプログラムとして、興味深いものでした。

Tech系企業の主要メンバーやスタートアップだけでなく、国内外の政治家もセッションに登壇してお互いに意見を交わす様子は日本ではなかなかお目にかかれない光景でしょう。

 

デジタルテクノロジーはいかに社会に貢献できるか?

Tech系のイベントではありますが、多くの政治家が登壇することにも表れているように、ビジネスの話題以上に、プライバシーや環境問題など社会課題が語れれることが多い印象を受けました。企業からのプレゼンテーションも、そうした文脈が強く感じられました。

今回のイベント全体を通じて、GoogleFacebookといった大手プラットフォーマーへの批判の声が非常大きかったことは、強く印象に残りました。

特に、彼らのビジネスモデルについて「個人情報を得てそれを活用し、富を集めている」という指摘が声高になされ、そのアンチテーゼとして「社会に対してどのようにテクノロジーが貢献するか? そのリスクからいかに市民を守るか?」といったテーマが盛んに議論されていました。GDPRを大きなきっかけとして、各国で大手プラットフォーマーへの風当たりが強くなってきた現在、その議論をリードしたEUが自信を取り戻している、そんな風にも感じられました。

他方、ヘルスケアや環境へのインパクト、フードセキュリティや犯罪防止といった社会問題に対するテクノロジーの活用については踏み込んだアイデアが挙げられ、AIやマシンラーニング、データ活用が社会問題解決に貢献できるのではないか? とか、今後5年程度でどのような社会的インパクトを与えられるのか? といったことが今日の主要テーマとされていました。

この文脈で、フランスの製薬メーカーであるサノフィが意欲的な発表をしていたのでご紹介しましょう。ご存知の通り、サノフィのような製薬メーカーは、新薬を世に出すまでに、研究開発から膨大な数のテスト等を行なうわけで、当然そこには多くの時間と莫大なコストが費やされてきました。

しかし、「今後はAIのデータ解析によって開発効率を上げていけるはずだ」とサノフィは言います。そうなれば、より早く新薬を発表することができ、世界の疾病対策や人々の健康に貢献できるだろう、というわけです。最後に同社は、「それを実現させるためにも、データドリブンカンパニーになる!」と宣言していました。これは製薬会社の新たな有り様を想起させる発表だと言えるでしょう。

 

幅広い業界業種がブースを展開した展示会ゾーン

EU圏内やアフリカ圏だけでなく、中国や韓国、中南米からも本イベントに参加する企業や著名人が多く見られました。いくつかご紹介しましょう。

 

たとえば、いまEスクーターの販売を手がけている”世界最速の男”ウサイン・ボルト氏は、自社の製品を持ち込んでフランス国内でのPRを始めていました。また、中国のTech企業であるアリババのジャック・マー氏もセッションに登壇していましたし、報道を賑わせている”渦中の企業”ファーウェイもセッションで存在感を放っていました。

 

展示会には世界中のほとんどのクラウド&IT企業が出展していると言っても過言ではないほど様々な企業が並んでいましたし、こうしたイベントでは、これまであまり見られなかったコンサル会社もブースを出して講演会を行なっていました。

日本関連ではソフトバンク・ロボティクスが出展しており、ペッパーくんと記念撮影する来場者も多く見られました。

 

お膝元のフランス企業については、自動車産業からルノー、シトロエンが。観光業からはアコーホテルズ、放送業界からはTF1グループ、フランス郵政公社のラ・ポストやフランス国鉄(SNCF)といった国家の基幹産業が軒並み大きなブースを構えていました。

 

ブランド企業とスタートアップの共同開発技術が実務レベルに

各ブースでは、ブランド企業とスタートアップがコラボレーションして新たな開発した事例がいくつも紹介されており、実際にそのテクノロジーに触れる機会もありました。

たとえば、LVMHのブースでは、液晶パネルを組み込んだLouis Vittonのバッグの展示や、顧客に最適な香水をレコメンドするVoice Chatによるインタラクティブな仕組みや、ミラーに仕組まれた画像解析によって、コスメティクスを推奨するといった、体験ブースに多くの人だかりができていました。

多くの来場者で溢れるLVMHブース

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、ロレアルのブースでは、画面に顔を映しリップの色を重ねてシミュレーションし、気に入ったものを購入できるコスメの自動販売機を紹介されていましたし、デバイスで肌の色などをチェックしてそのひとにぴったりなファンデーションをオススメしてくれるような機能も紹介されていました。

こうしたラグジュアリーブランドやコスメティクスブランドによる、店頭での体験価値の向上に向けた取り組みの紹介は、非常に完成度の高いもので、早くからStartupを巻き込んでの研究開発に意欲的に取り組んでいることが伺えます。フランスの基幹産業の面目躍如といったところでしょうか。

ロレアルブースでは、マーケティングや製品開発に活用するツールとして、インスタグラムなどに投稿されている膨大な数の画像を鳥瞰的に把握・分類・解析してトレンドをダイナミックに把握するツールを紹介していました。AIによる画像解析を活用したこのツールは、すでに実装され、全社員がアクセス可能だという点は、驚きです。

AIによる画像解析を活用したツールの紹介

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ARの利活用の例としては、マジックリープが開発したという遠隔会議システムを欧州メガバンクのひとつBNPバリパが活用している、という事例が興味深いものでした。遠隔地同士の会議でも、ARを活用すればその場で対面しているような感覚で議論できる、というものです。

これを応用して、BNPバリパは、地図上の不動産物件の詳細をよりリアルな3D表現で確認できるシステムを活用しているとのこと。金融機関のような伝統的な業種はテクノロジーの活用が遅れている、としばしば指摘されることもありましたが、少なくともフランスではスタートアップと連携して生み出したテクノロジーを実務レベルで活用するまでに至っている、と言えそうです。

 

一部では「米国や中国の後塵を拝している」と指摘されていたEUが、行政トップの強いリーダーシップに後押しされてデジタルテクノロジー領域で復権をはかろうとしている様子がひしひしと伝わってきた本イベント。EUとして、AI領域に非常に注力していることや、スタートアップを育成しグローバル企業とのコラボレーションを強く推進していることがよく分かりました。果たして、このEUの取り組みが、いかなる成果をあげるか、同様に米中に遅れを取っている日本も注視していく必要があります。行政の産業育成への関与の仕方という点では、参考になる面があるのではないか、そんな気がします。

 

他方、デジタルテクノロジー領域のビジネスはルールなき開拓時代を終え、一定の規制の必要性が論じられ始めたことは注視すべきポイントです。

GDPR以降、EUは「この議論をリードしていく」という強い姿勢を示していますし、実際に世界各国に対して影響を強めているのは周知の通りであり、日本も当然その例外ではないでしょう。個人データ利用のルール改定や、大手テックプラットフォーマーへの課税問題など、デジタルマーケティングに影響を与えるうる政治的テーマに日本も深く関わりつつあります。

私たちも、こうした環境の変化を注視していく必要がありそうです。

 

 

電通iX 始動、そして多様性のあるグローバルへ

いよいよ本日から、新ブランドで会社がスタートしました。
朝一の全社ミーティングでは、電通グループのデジタル&グローバル戦略について社員に改めて説明をし、今後私たちが期待される役割と、世界中のネットワークによって広がるビジネスの可能性について、話をしました。
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5月の末にPublicisとの合弁解消を発表して以降、Isobarや360iなど海外のネットワークの経営陣と会話をスタートさせたのですが、こちらが思っている以上に、先方の期待感が大きく、ちょっと驚いています。Razorfishと長らく仕事をしてきたイメージが、プラスに働いているのだと思うのですが、逆にその期待に応えていかねば、と気合いも入ります。
世界を見渡すと、国毎にデジタルマーケティングの置かれているコンディションは様々で、中国に行けば、ソーシャルを軸としてキャンペーンを設計するのが当たり前ですし、米国なら、Razorfishでも経験しましたが、企業の統合的なマーケティングプラットフォームの構築を支援するようなビジネスが非常に重要になっています。欧州では国をまたいでプランニングするのが普通なのが、東南アジアでも広がってきていますし、メディア環境や生活者のデジタルリテラシー、インフラなど様々な前提条件の違いが、多様性を生み出しています。
最近思うのは、その事を理解、認識できる事が、非常に重要なのではないか、ということです。
かつては、タイムマシン経営ではありませんが、米国発のマーケティング手法が数年遅れで日本でやってくるので、米国を見ていれば、OKという感じがありましたが、それも今や、昔の事のような気がします。ネットのインフラやメディア環境の変化は、新興国ほど急激で、そのことが、生活者の消費行動をドラスティックに変化させ、そうした中で計画されるデジタルマーケティングの方に、新たなアイディアのヒントが隠れていたりするのではないか、と感じます。
今日の新たな船出とともに、電通iXでは、日本を起点に、真にグローバルなデジタルソリューションを提供できる体制を整備して参りたいと思います。

Razorfish 2年連続でAd AgeのAgency A-Listに選出

毎年恒例のAdvertising AgeのAgency A-Listに、昨年に引き続き、Razorfishが選出されました。Agency A-Listは、過去1年に活躍したAgency10傑ということで、Advertising Ageが発表するものですが、今年のリストを見ていて、デジタル/インタラクティブ系のAgencyが今年は多いことに驚きました。Razorfish同様、360i、R/GAがリスト入りし、また新興のクリエイティブエージェンシーとして、インタラクティブにも秀でている、Droga5など、従来のAgencyとデジタル/インタラクティブAgencyの垣根が本当になくなってきたな、と感じます。

試しに、当社が現在のJVとなった、2007年のA-Listと比較をしてみました。

(さらに…)