マレーシア初のユニコーンとウワサの「Grab(グラブ)」


先日、マレーシアやベトナム方面に出張する機会がありました。
そこで今回は、出張時に得た気付きとマレーシアで話題のプラットフォーム「Grab(グラブ)」について取り上げたいと思います。

マレーシア市場はちょっと難しい

じつは、マレーシアへの出張は初めてだったこともあり、事前に少しリサーチをしてみました。せっかくなので少しご紹介しましょう。
マレーシアの人口は約3,200万人(2017年マレーシア統計局)。
国民一人当たりのGDPは、シンガポール、ブルネイに次ぐ高さを誇っています。主に、原油・石油製品、パ-ム油やLNGといった資源の輸出で潤っているとともに、
欧米や日本の製造業が多く進出しています。サービス業では、観光産業が多いほか、医療や教育といった分野も成長産業になっています。

マレー系(約69%)、中国系(約23%)、インド系(約7%)という多民族国家としても知られており、イスラム教が61%と大多数を占めます。
が、仏教、儒教・道教、ヒンドゥー教(6.0%)、キリスト教(9.0%)ほか、地域に根ざした宗教もあるようです。
参考;外務省「マレーシア基礎データ

このように宗教や文化的背景が異なるひとが多いため、広告プロモーションの立場からすると、各属性に合わせた展開が必要になり、予算が分散しやすいマーケットと認識されています。
ひと言でいうと「統一した施策が打ちづらく、マスマーケティングがちょっと難しい」といったところです。

マレーシアのメディア事情

メディア事情も特徴的です。モバイル(スマートフォンやタブレットなど)の普及台数は4,000万台と言われ、国民ひとりあたり1.25台くらい所有しているという計算になります。
web利用や通話、動画視聴といった利用スタイルが浸透しているとの調査結果も出ていることから、典型的なモバイルファーストの国です。

そうした背景もあり、広告出稿もいわゆるマス媒体よりモバイルへの伸びが高くなっています。日本のようなTVやラジオ、新聞を中心にしたメディアの発展と普及が起こる前にモバイルベースのデジタルサービスが主流になった、ということなのでしょう。

特に人気のサービスは、Youtubeをトップに、WhatsAppやFacebook、InstagramやMessenger といった順だとか。Googleは頑張っているものの、Facebook関連サービスがマスメディアのようになっている、という様相です。月間のActive User数で見れば、人口3200万人に対して、Facebookで2,400万人にリーチできます。

Grab(グラブ)の発展から考えられる施策

こうしたモバイル・ファーストな国では、新たなプラットフォームも盛んに生まれてきます。そのなかでも注目株なのが「Grab(グラブ)」というアプリです。東南アジア版Uberみたいなもので、マレーシア初のユニコーンとの呼び声も高く、ソフトバンクほか、トヨタやホンダも出資企業に名を連ねています。

昨年、Uberの東南アジアのビジネスを買い取って、一気に配車アプリとしてトップの地位を確立した「Grab」。マレーシア国内で見れば、利用コストは安く、日本のタクシーの1/5〜1/6くらいに設定されています。そうした利用しやすさのほか、モータリゼーションが進んだ国ということもあって、現地の足としても親しまれているというわけです。

ちなみに、マレーシアでは自動車の配車アプリとして利用されていますが、ベトナムではお国柄か、バイクの配車アプリとしても利用されています。

さて、東南アジアの期待の星である「Grab」ですが、配車アプリとしてだけではなく、フードデリバリーや決済サービスも提供し始めています。マレーシアでもキャッシュレスはまだまだ普及途上なところがあるようですが、「これをカバーするのはGrabだろう」と目されています。実際に、決済をするとクーポンが付与されたり、ポイントが貯まったり、といった仕掛けもあるようです。今後のサービス拡充がますます期待されるところです。

こうした一つのドミナントなプラットフォームからマルチ展開するスーパーアプリは、中国はWeChat、タイでは日本同様LINE、というように国によって異なりますが、我々のクライアントであるブランドにとっては、カスタマーエクスペリエンスにおける重要な接点になり得ます。モバイルファーストであるほど、こうした接点の充実ぶりが加速していますので、こうした勢いがあるプラットフォームとは、ぜひ何か一緒におもしろいことをしたいものです。日本からアイディアを持ち込んで、現地のオフィスと組んで実現したいものです。そのことが、逆に日本での新しいサービス開発のヒントにつながるのではないかと思います。

そんなことを考えていたら、なんとGrabがJapan Taxiと組んで日本に進出するというニュースが飛び込んできました。アジアのユニコーンの動きも海外展開のスピードを増してきています。

「Grab」に限らず、海外にはこういったチャンスがまだまだ眠っていることでしょう。これからも、新しく誕生したサービスに注目し、ビジネスチャンスを探っていきたいと考えます。

MaaS推進の前に日本が目を向けるべきこと

このところ「MaaS(Mobility as a Service)」への関心が一層高まっているように感じます。鉄道会社と航空会社の連携や、IT企業と自治体、IT企業と自動車メーカーの連携といったニュースが立て続けに報じられているのを目にした方も多いでしょう。

国内では、トヨタ&ソフトバンクの「MaaS連合」が注目を集めるなど、熱を帯びるMaaSですが、私たちも、この分野にどう貢献できるか、考えていく時期に来ていると考えています。

MaaSの取り組みは、世界中でおきていますが、日本の動きは、シンガポールやスウェーデンといったこの領域における先進諸国に比べて、「遅れている」と言わざるを得ない状況なようです。

北欧の大学の研究によれば、MaaSを実践するステップは、交通事業者間による「情報の統合」に始まり、「予約・決済の統合」「サービスの融合」「政策との統合(社会課題解決との統合)」へと発展していくと考えられますが、日本は、まだ最初の段階。しかし、諸外国の中には、ヘルシンキのWhimのようにサービスの融合レベルまで実現しているものもあります。

では、日本がこの分野を活発化していくにはどうすればいいか?

これを考える前に、“足下の状況”を見てみましょう。

 

CX(カスタマーエクスペリエンス)を良くしようという発想が感じられない日本の予約サイト

至近の例として、私が体験した“残念なCX”についてお伝えしましょう。

この夏、休暇をフランスで過ごそうと、空港に向かうべく交通機関のチケット予約をしようとした時のことです。

まず、パソコンで交通機関の予約サイトに飛び、チケット予約について調べてみました。すると「チケットレス申し込みがおトク」というリンクが。確かに、価格は200円ほど安く設定されています。「これはいい!」とクリックすると、なぜかこの交通機関のサイトから別の購入サイトに遷移することに…。

では、その購入サイトでそのまま席の予約ができるかというと、できないのです!

実は、割引はスマホからの予約のみ。もちろんそのような説明がサイト上にはあるのですが、情報量が多いサイトゆえに、そのことに簡単に気がつくのは難しそうです。結局、スマホから検索し直して、チケットレスで予約はできたのですが、正直、残念な気持ちになります。

この交通機関のサイトは少なくともこの10年、前述のように自社のサイトとチケット予約のサイトが統合できていない状態が続いています。また、ユーザーIDの統合もされておらず、利用者にとって非常に複雑な仕様になっています。これでは良質なCXをもたらすことはほぼ不可能と言えるでしょう。

「日本人である私がたくさん疑問を感じる仕組みなのだから、海外からのお客様がこの交通機関を使おうとすると、さぞ大変な思いをするだろうな」と、英語版も見てみることにしました。

すると、この交通機関のTOPページにはびっくりするほどたくさんの情報が盛り込まれていました。これではすぐに知りたい情報にたどり着くのは困難なはず。しかも、チケットに関しては「券売機で買える」という情報だけが…。なぜ、オンラインで購入できないのか、首をひねりたくもなります。

実際、私は、いつも空港でたくさんの外国人観光客が購入窓口や券売機に並んでいるのを見かけます。かつてその列に並んだこともありますが、日本人だけの列と違い、券売機の前で迷う人も多数いて、思いのほか時間がかかり、乗りたい電車を逃したこともありました。


Google Mapさえ使えれば、すべての交通手段の予約が可能

さて一方、フランスでの滞在中、モン・サン・ミッシェルまで足を伸ばそう、ということになり、パリからの行き方を調べてみました。

そこで、行き方をGoogle検索してみたところ、検索結果の1ページ目にはほぼオンラインチケット申し込みのリンクが揃っていました。これは、日本では見られないものです。

Google Mapの検索結果

 

「パリからモン・サン・ミッシェルへの道のり」検索結果 ほとんどが予約サイト

検索結果の中からひとつのサイトを選んで、チケット予約をしようとすると、そこではバスと列車がいっぺんに予約できるようになっていました。パリからモン・サン・ミッシェルまでは、ツアーバス以外は、鉄道とバスの組み合わせで行くのが主流のようで、利用する交通手段それぞれの予約を別々に行なうことを想定していた私は、この便利さには、感心しました。

検索結果の中から「RailEuropa」に遷移すると、日本語で予約が可能

その後調べてみると、このような便利なサービスはフランスに限ったことではなく、ドイツなどでも同様です。航空会社、バス会社、鉄道会社ほか、複数の企業が連携して利便性を高めることが、普通にオンライン上で実現されています。

またパリ滞在中、市内の移動にはGoogle Mapが欠かせません。そして行き先を検索すると、メトロなどの公共交通機関に加え、Uberや新興の電気スクーターのLIMEといった代替手段も提示され、アプリへのリンクで予約もスムーズにできるようになっていました。

列車とバス以外の交通手段とその予約も可能に

つまり、パリのような都市では「Google Mapが使えさえすれば、移動の心配はほとんどない」というわけです。

はじめに「海外では日本よりMaaSが進んでいる」と紹介しましたが、このように、すでに企業間の連携が具体的に始まっており、利用者がwebやモバイルで簡単にそのサービスを活用できる環境が整っているからこそ、取り組みがスムーズに進んでいるのかもしれません。

 

もう一例、フィンランドの「whim」を挙げておきましょう。

このアプリには、様々な交通手段の予約システムが統合されていて、自分が行きたい場所を入力しさえすれば、経路と交通手段の提案がなされます。もちろん、そこで予約も可能です。

「whim」のファウンダーは、長らく交通とITに関する様々なサービス開発に関わっていて、直前は産学官の高度道路交通システムのコンソーシアムの代表を務めていたとのこと。そのため、マイカー依存に陥っていたヘルシンキ市民を公共交通機関の利用へとシフトさせたいと考えていた中央官庁の協力も得られ、その大義のもと、利害関係が異なる複数の企業も好意的に参加してくれたのかもしれません。逆に、同サービスはグローバル展開を進めていますが、ステークホルダー間の利害調整がボトルネックになっているとの話も聞こえてきます。

 

現在の利便性に満足せず、CXの視点で考えることが求められている

では、再び日本の現状を見てみましょう。

こうしたサービスが有効に活用されるであろう都市部では、公共交通機関の利用度も高く、高いサービスレベルにあります。マイカー依存の問題という話も聞こえてきません。また、Suicaなど電子マネーによる公共交通機関の決済は共通化が進み、利便性も高い状況にあると思います。では、Maasのニーズはあるのでしょうか?

私たちの日常生活の顧客体験は、スマホとクラウドサービスによって日々変化を遂げています。その中で、顧客が期待するCXのレベルも日々上がっていると言えます。海外旅行でオンラインサービスの便利さを体感したら、日本でも同様のサービスを期待するのは、当然のことです。Suicaなどオフラインでのサービスレベルが高いだけに、オンラインをベースとしたCXがイマイチなのは、なんとも残念なことであります。ハード偏重でソフトが出遅れた他の産業に似た印象を受けます。

そしてまた、観光立国を目指す日本であれば、グローバルスタンダードなCXを公共交通機関で提供することは、必須の社会課題だと考えるべきではないでしょうか?

人口減少が進み市場の縮小化が避けられない現状を前に、新たな収益モデルを見付けなければならない、という環境の中で新たな価値を生み出す為にも、取り組むべきテーマだと思います。

私たちは、こうしたところに「CX目線でMaaSの取り組みを加速させるにはどうすればいいか?」を提案することで、企業の課題を解決し、社会に貢献できるかもしれないと考えています。

CMOは悩んでいる〜「CMO survey 2019」〜

 

電通アイソバーも所属する電通イージス・ネットワークから、今年も「CMO survey 2019」が発表されました。全世界の1000名あまりのCMO(Chief Marketing Officer)にインタビュー調査した結果は、さまざまな示唆を与えてくれるものです。今回はこれについて、お伝えします。

 

マーケティング活動は成長のドライバー! だけれど…

「CMO survey 2019」の内容に踏み込む前に、McKinsey & Company社が発表した調査から、企業あるいはCEOからCMOがどのように評価されているのか、見ておきましょう。

調査によると、CEOの83%が「マーケティング活動は明らかに成長のドライバーだ」と考えているようです。一方で、23%が「社内のマーケティング組織は成長に向けての指針を示せていない」と回答したとあります。リンク 引用元:McKinsey & Company社

 

「CMO survey 2019」から読み解くCMOの悩み

では、会社の成長ドライバーとしての活躍を期待されるCMOはどのようなことを考え、どんな悩みを抱えているのでしょうか? 「CMO survey 2019」から読み解いていきましょう。

まず、CMOたちは、マーケティング活動はトランスフォーメーションやイノベーションのエンジンになり得ると信じ、79%が「社内のデジタル領域において、最適化ではなく、トランスフォーメーションを起こさなければならない」と考えているようです。また、80%が「自社の製品やソリューションのイノベーションに責任を持たなければならない」と強く感じているとの回答が得られました。

Source: Dentsu Aegis Network CMO Survey 2019

しかし、先述のようなCMOの意志やビジネス上の使命感、は必ずしも組織にとっての主要な役割とは見なされていないようです。

 

Source: Dentsu Aegis Network CMO Survey 2019

マーケティング活動やそれを担うCMOに対してより求められている成果は、ビジネスの成長につながるマーケティング活動や市場のトレンドや消費者心理を把握することであり、劇的なイノベーションやビジネスの転換への貢献はまだまだ優先度が低いようです。この意向からは、マーケティング部門が従来から期待されている役割に、縛られている印象を受けます。

では、CMOの悩みは、より深く具体的に見ていくと、どのようなものなのでしょうか。彼らの悩みは、仕事を進める上でのKPIの内容であり、これまでの戦略設計や考え方が時代に合わなくなってきたことであり、短期のROIに注目されすぎて長期戦略を描けなくなっていることだと読み取れます。

 

Source: Dentsu Aegis Network CMO Survey 2019

ちなみに、大手コンサルティンググループが出した調査結果によると、「長期戦略を描いている企業の方が、そうでない企業より5倍程度高い売上を得ている」とのこと。つまり、激変する世の中に応じてどんどん戦略を変えるよりも長期的な視点を持つ方が結果的に事業成長が実現されている、というわけです。

それにも関わらず、目先のことにとらわれ過ぎて、トランスフォーメーションやイノベーションに力を注がないとしたら、それは非常に残念なことです。

 

CMOに期待される新たな役割にエージェンシーはどう応えるか?

一方、マーケティング部門やCMOの役割が、より重要度を増してくる現在、CMOは社内において、CFOやCOO、CSOやCEOなどあらゆる“C”が付くひと達をインテグレートするよう期待されています。事業の根幹に関わる役割として、社内の様々な責任者と連携していくことが求められているのです。しかし、「CMO survey 2019」によると、実際にそれができていると感じているのは43%程度に留まっています。

 

では、そうした様々な悩みを抱えるCMOに、エージェンシーは何をすべきなのでしょうか?エージェンシーにも、多様な機能を統合したマーケティングサービスの提供が期待されるようになる昨今、今回の調査では、その実現にはまだ半数以上の人たちが信じていません。また、この点が、近年コンサルティングファームとエージェンシーがライバル関係になっている理由だと考えられます。それだけに、こうした期待に答えうる組織やサービスの開発が喫緊の課題でしょう。

*CMO survey 2019の資料ダウンロードはこちら

 

 

 

「インターネット・トレンド2019」の注目点

 

クイーン・オブ・インターネットこと、メアリー・ミーカー氏による『インターネット・トレンド 2019』が公開されていますが、毎年この時期に恒例となっているこのレポートには、11のテーマが挙げられており、インターネットやテクノロジー関連だけでなく米国内の移民問題やヘルスケアに関する課題、米中問題などについても語られています。

ここでは、このレポートから私が特に注目している点を紹介したいと思います。

 

インターネット関連ビジネスは、依然多くが成長分野として力強い

まず、米国国内のレポートではありますが、Eコマースの成長は12.4%と引き続き力強い成長を遂げていることが指摘されています。リテールセールスの成長率が2%程度なことと比較すると、その伸び率は相当なものだと言えるでしょう。

インターネット広告への出稿については、前年比で25%の伸びであったと記されています。3〜4年の中期視点で見ても、その成長率は20%なので、インターネット広告は依然、大きな成長分野です。ただ、一方で日本のインターネット広告の成長は2桁成長はしているものの、ここまでではなく、過去数年、数ポイント程度下回り続けています。どこに違いがあるか、我々は認識を深める必要があるでしょう。

ただし、インターネット広告にも変調も見られています。グローバルでのレポートでは、たとえば、GoogleやFacebookの二強の成長はやや鈍化しており、Amazonやツイッター、Pinterestの伸びの方が強い、という傾向が見られると分析されています。GDPRほか、各国が個人情報保護の法令を強化する今日、この2社の評価がどのように変化していくか、引き続き注視していくべきでしょう。

また消費者の利用時間で見ると、主要プラットフォームの中で最も利用時間が伸びているのが、YouTubeとInstagram。動画やビジュアルコンテンツがマーケットを牽引している状況が伺えます。

 

フリーミアムは今後のトレンドになる

今年のレポートで注目すべきトピックとしてあげられたのは、フリーミアムとデータ活用です。

フリーミアムは、昨今のネット系ビジネスの中でもは外せないビジネスモデルですが、SpotifyやZoom、Google Suiteのように、サービスを一部無料で提供し、有料サービスへの加入を促すこの仕組みは、広く無料の「利用者」を獲得し、その後課金できる「顧客」になってもらうということで、提供されるサービスによる顧客満足度が重要になってきます。

たとえば最近IPOを成功させたZoomは、ここ最近のIPO企業の中では、すでに利益を上げているとして注目されていますが、ネットプロモータースコアが他のサービスより圧倒的に高いそうです。

顧客満足度を高めるためのサービスに投資する一方、フリーミアムモデルを採用することで、顧客リードを獲得するための費用を大きく削減する、というアプローチです。

 

顧客満足度という観点から、STITCH FIXもレポートの中で紹介されています。こちらはフリーミアムモデルではありませんが、同社は、契約者に対して、プロのスタイリストとAIが選んだ服を数点、毎月送り、気に入ったものを買い取ってもらう、というビジネスモデルを展開しています。購入のコミットメントは無いので、その点では利用のハードルを低くしています。サービス開始時から、新たなファッションビジネスとして以前より注目されていましたが、現在では300万人まで会員数を伸ばしており、データに基づくパーソナライゼーションの精度を高め、高い利用率を実現しているようです。

 

フリーミアムなどの手法により、顧客にサービス利用のハードルを下げ、顧客満足度を高めていくことに注力することで、ビジネスをドライブさせていくというアプローチは、マーケティングコストの考え方も従来とは異なってきますので、私たちも十分注視しておく必要があります。

 

データエコノミーの本格化に向けて不可欠な視点

Internet Trendsからちょっと離れますが、データ活用に関して、日経新聞に興味深い記事がありました。「データGDP」日本は11位という記事で、アメリカのタフツ大学が調査発表した資料によれば、データエコノミーでリーダーシップを発揮している国の上位は、米国や中国、スイスや韓国であり、日本は11位に留まっているとのことです。

この評価の指標には、データのボリューム、利用数、利用者、データに対するアクセサビリティやコンプレクシティが挙げられるとのこと。こうした指標において、日本が低評価なのは、データの活用が非効率な状態になっており、特に政府が保有する情報へのアクセサビリティが低い点。

また、大企業がデータを独占していてスタートアップ企業がデータをうまく活用できていない、といった点も原因とみなされているようです。このような状況が続けば、「日本の今後の経済活動等に影響が及ぶおそれがあるのでは」との懸念もされているとか…。

 

これに関連して、他にも興味深い記事が出ていました。日本のある地方自治体では、データ活用を積極的に推進しているものの、本来狙ったターゲット層には全く活用されていないと。たとえばバスの乗車数をリアルタイムに発信しているにも関わらず、これを利用する若者が少なかったり、子育て支援のアプリを提供しているけれど必要としている子育て世代の認知度が低かったり。

つまり、行政側の目論見と想定される利用者との間にギャップが見られる、というわけです。こうしたミスマッチは、データエコノミーを推進していく上で、致命的だと言えます。

このようなケースを見ますと、私たちは、ユーザーニーズを見極め、顧客視点でのデータ活用を提案することを、より積極的に推し進める必要があると痛感します。

 

さて、データ活用について、Internet Trendsに戻ると、2000年以降、成長を続けている企業は「データプラミングツールを活用している」との指摘があります。「プラミング」とは、水道の配管のことですが、データを上手くコントロールしながら流していくようなツール、と解釈すれば良いかもしれません。データの収集からチャネルとのつながり、データオプティマイズも含めてきちんと連携させていくためのもので、ここでは、Salesforce、Slack、UiPath、Looker、Confluentなど様々なツールを活用して成功している企業事例が上げられています。データ活用のためのツールが数多くクラウドサービスとして提供される中で、こうしたツール活用の優劣がビジネスの成功を左右することにも繋がる、と言えそうです。

 

電通アイソバーとしては、顧客視点に立って「CX(カスタマー・エクスペリエンス)に合ったデータ活用が実現できているか?」「その際に、データをうまく活用するためのツールをどう選定し利用していくか?」を考え、提案することが重要だと考えています。

「VIVA TECHNOLOGY」レポート 〜主要テーマは、グローバル企業とスタートアップの協働と大手プラットフォーマーへのアンチテーゼ〜

5月16日から5月18日の3日間、ヨーロッパ最大級のTech系イベント「VIVA TECHNOLOGY」が今年もフランス・パリで開催されました。世界各国から12万人以上を動員した本イベントに私も足を運んでみましたので、現地の様子をレポートします。

VIVA TECHNOLOGYについて

「VIVA TECHNOLOGY」は、日本ではそれほど知名度が高いイベントではないかもしれませんが、たとえばマクロン大統領が通商大臣だったころから今もなお深くコミットするなど、フランスでは国の威信をかけた取り組みと位置付けられ、今年は12万人超の来場者を集める欧州最大のTechイベントです。

Tech領域のトレンドや新技術、企業の活用例が披露される 欧州最大級のTechイベント「VIVA TECHNOLOGY」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Tech領域のトレンドや新技術、企業の活用例が披露されるだけでなく、中心テーマのひとつであるスタートアップ支援の名の下、「NEXT EUROPEAN UNICORN AWARDS」と題した大型スタートアップの表彰が行なわれたり、ハッカソンでイノベーティブな発想を発掘する機会があったりもします。

訪れてみれば、業界関係者ならずとも大変刺激的な経験ができるでしょう。

https://vivatechnology.com/

 

国内外の政治家、業界を超えた名だたる企業、新進気鋭のスタートアップが一緒になって議論する場

本イベントは、最近の大型Techイベント同様、展示会とカンファレンスから構成されており、カンファレンス会場では、今年もたくさんのセッションが行なわれました。

ここでまず注目したいのは、登壇者のバリエーションの豊かさです。

たとえば、マクロン仏大統領がスタートアップの経営者たちと対談したセッションもあれば、カナダのトルドー首相が、SNSを介したフェイクニュースの拡散やテロを煽動するようなコンテンツで損なわれたネットの信頼回復に向けて、新たにDigital Charter(デジタル憲章)を制定したと発表するセッションも。また、フランスというお国柄か、セネガルとルワンダというアフリカの大統領が登壇し、eGovernmentについて語るといった光景も、フランスの過去の歴史と次のビジネスを見据えたプログラムとして、興味深いものでした。

Tech系企業の主要メンバーやスタートアップだけでなく、国内外の政治家もセッションに登壇してお互いに意見を交わす様子は日本ではなかなかお目にかかれない光景でしょう。

 

デジタルテクノロジーはいかに社会に貢献できるか?

Tech系のイベントではありますが、多くの政治家が登壇することにも表れているように、ビジネスの話題以上に、プライバシーや環境問題など社会課題が語れれることが多い印象を受けました。企業からのプレゼンテーションも、そうした文脈が強く感じられました。

今回のイベント全体を通じて、GoogleFacebookといった大手プラットフォーマーへの批判の声が非常大きかったことは、強く印象に残りました。

特に、彼らのビジネスモデルについて「個人情報を得てそれを活用し、富を集めている」という指摘が声高になされ、そのアンチテーゼとして「社会に対してどのようにテクノロジーが貢献するか? そのリスクからいかに市民を守るか?」といったテーマが盛んに議論されていました。GDPRを大きなきっかけとして、各国で大手プラットフォーマーへの風当たりが強くなってきた現在、その議論をリードしたEUが自信を取り戻している、そんな風にも感じられました。

他方、ヘルスケアや環境へのインパクト、フードセキュリティや犯罪防止といった社会問題に対するテクノロジーの活用については踏み込んだアイデアが挙げられ、AIやマシンラーニング、データ活用が社会問題解決に貢献できるのではないか? とか、今後5年程度でどのような社会的インパクトを与えられるのか? といったことが今日の主要テーマとされていました。

この文脈で、フランスの製薬メーカーであるサノフィが意欲的な発表をしていたのでご紹介しましょう。ご存知の通り、サノフィのような製薬メーカーは、新薬を世に出すまでに、研究開発から膨大な数のテスト等を行なうわけで、当然そこには多くの時間と莫大なコストが費やされてきました。

しかし、「今後はAIのデータ解析によって開発効率を上げていけるはずだ」とサノフィは言います。そうなれば、より早く新薬を発表することができ、世界の疾病対策や人々の健康に貢献できるだろう、というわけです。最後に同社は、「それを実現させるためにも、データドリブンカンパニーになる!」と宣言していました。これは製薬会社の新たな有り様を想起させる発表だと言えるでしょう。

 

幅広い業界業種がブースを展開した展示会ゾーン

EU圏内やアフリカ圏だけでなく、中国や韓国、中南米からも本イベントに参加する企業や著名人が多く見られました。いくつかご紹介しましょう。

 

たとえば、いまEスクーターの販売を手がけている”世界最速の男”ウサイン・ボルト氏は、自社の製品を持ち込んでフランス国内でのPRを始めていました。また、中国のTech企業であるアリババのジャック・マー氏もセッションに登壇していましたし、報道を賑わせている”渦中の企業”ファーウェイもセッションで存在感を放っていました。

 

展示会には世界中のほとんどのクラウド&IT企業が出展していると言っても過言ではないほど様々な企業が並んでいましたし、こうしたイベントでは、これまであまり見られなかったコンサル会社もブースを出して講演会を行なっていました。

日本関連ではソフトバンク・ロボティクスが出展しており、ペッパーくんと記念撮影する来場者も多く見られました。

 

お膝元のフランス企業については、自動車産業からルノー、シトロエンが。観光業からはアコーホテルズ、放送業界からはTF1グループ、フランス郵政公社のラ・ポストやフランス国鉄(SNCF)といった国家の基幹産業が軒並み大きなブースを構えていました。

 

ブランド企業とスタートアップの共同開発技術が実務レベルに

各ブースでは、ブランド企業とスタートアップがコラボレーションして新たな開発した事例がいくつも紹介されており、実際にそのテクノロジーに触れる機会もありました。

たとえば、LVMHのブースでは、液晶パネルを組み込んだLouis Vittonのバッグの展示や、顧客に最適な香水をレコメンドするVoice Chatによるインタラクティブな仕組みや、ミラーに仕組まれた画像解析によって、コスメティクスを推奨するといった、体験ブースに多くの人だかりができていました。

多くの来場者で溢れるLVMHブース

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、ロレアルのブースでは、画面に顔を映しリップの色を重ねてシミュレーションし、気に入ったものを購入できるコスメの自動販売機を紹介されていましたし、デバイスで肌の色などをチェックしてそのひとにぴったりなファンデーションをオススメしてくれるような機能も紹介されていました。

こうしたラグジュアリーブランドやコスメティクスブランドによる、店頭での体験価値の向上に向けた取り組みの紹介は、非常に完成度の高いもので、早くからStartupを巻き込んでの研究開発に意欲的に取り組んでいることが伺えます。フランスの基幹産業の面目躍如といったところでしょうか。

ロレアルブースでは、マーケティングや製品開発に活用するツールとして、インスタグラムなどに投稿されている膨大な数の画像を鳥瞰的に把握・分類・解析してトレンドをダイナミックに把握するツールを紹介していました。AIによる画像解析を活用したこのツールは、すでに実装され、全社員がアクセス可能だという点は、驚きです。

AIによる画像解析を活用したツールの紹介

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ARの利活用の例としては、マジックリープが開発したという遠隔会議システムを欧州メガバンクのひとつBNPバリパが活用している、という事例が興味深いものでした。遠隔地同士の会議でも、ARを活用すればその場で対面しているような感覚で議論できる、というものです。

これを応用して、BNPバリパは、地図上の不動産物件の詳細をよりリアルな3D表現で確認できるシステムを活用しているとのこと。金融機関のような伝統的な業種はテクノロジーの活用が遅れている、としばしば指摘されることもありましたが、少なくともフランスではスタートアップと連携して生み出したテクノロジーを実務レベルで活用するまでに至っている、と言えそうです。

 

一部では「米国や中国の後塵を拝している」と指摘されていたEUが、行政トップの強いリーダーシップに後押しされてデジタルテクノロジー領域で復権をはかろうとしている様子がひしひしと伝わってきた本イベント。EUとして、AI領域に非常に注力していることや、スタートアップを育成しグローバル企業とのコラボレーションを強く推進していることがよく分かりました。果たして、このEUの取り組みが、いかなる成果をあげるか、同様に米中に遅れを取っている日本も注視していく必要があります。行政の産業育成への関与の仕方という点では、参考になる面があるのではないか、そんな気がします。

 

他方、デジタルテクノロジー領域のビジネスはルールなき開拓時代を終え、一定の規制の必要性が論じられ始めたことは注視すべきポイントです。

GDPR以降、EUは「この議論をリードしていく」という強い姿勢を示していますし、実際に世界各国に対して影響を強めているのは周知の通りであり、日本も当然その例外ではないでしょう。個人データ利用のルール改定や、大手テックプラットフォーマーへの課税問題など、デジタルマーケティングに影響を与えるうる政治的テーマに日本も深く関わりつつあります。

私たちも、こうした環境の変化を注視していく必要がありそうです。

 

 

電通iX 始動、そして多様性のあるグローバルへ

いよいよ本日から、新ブランドで会社がスタートしました。
朝一の全社ミーティングでは、電通グループのデジタル&グローバル戦略について社員に改めて説明をし、今後私たちが期待される役割と、世界中のネットワークによって広がるビジネスの可能性について、話をしました。
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5月の末にPublicisとの合弁解消を発表して以降、Isobarや360iなど海外のネットワークの経営陣と会話をスタートさせたのですが、こちらが思っている以上に、先方の期待感が大きく、ちょっと驚いています。Razorfishと長らく仕事をしてきたイメージが、プラスに働いているのだと思うのですが、逆にその期待に応えていかねば、と気合いも入ります。
世界を見渡すと、国毎にデジタルマーケティングの置かれているコンディションは様々で、中国に行けば、ソーシャルを軸としてキャンペーンを設計するのが当たり前ですし、米国なら、Razorfishでも経験しましたが、企業の統合的なマーケティングプラットフォームの構築を支援するようなビジネスが非常に重要になっています。欧州では国をまたいでプランニングするのが普通なのが、東南アジアでも広がってきていますし、メディア環境や生活者のデジタルリテラシー、インフラなど様々な前提条件の違いが、多様性を生み出しています。
最近思うのは、その事を理解、認識できる事が、非常に重要なのではないか、ということです。
かつては、タイムマシン経営ではありませんが、米国発のマーケティング手法が数年遅れで日本でやってくるので、米国を見ていれば、OKという感じがありましたが、それも今や、昔の事のような気がします。ネットのインフラやメディア環境の変化は、新興国ほど急激で、そのことが、生活者の消費行動をドラスティックに変化させ、そうした中で計画されるデジタルマーケティングの方に、新たなアイディアのヒントが隠れていたりするのではないか、と感じます。
今日の新たな船出とともに、電通iXでは、日本を起点に、真にグローバルなデジタルソリューションを提供できる体制を整備して参りたいと思います。

Razorfish 2年連続でAd AgeのAgency A-Listに選出

毎年恒例のAdvertising AgeのAgency A-Listに、昨年に引き続き、Razorfishが選出されました。Agency A-Listは、過去1年に活躍したAgency10傑ということで、Advertising Ageが発表するものですが、今年のリストを見ていて、デジタル/インタラクティブ系のAgencyが今年は多いことに驚きました。Razorfish同様、360i、R/GAがリスト入りし、また新興のクリエイティブエージェンシーとして、インタラクティブにも秀でている、Droga5など、従来のAgencyとデジタル/インタラクティブAgencyの垣根が本当になくなってきたな、と感じます。

試しに、当社が現在のJVとなった、2007年のA-Listと比較をしてみました。

(さらに…)