「VIVA TECHNOLOGY」レポート 〜主要テーマは、グローバル企業とスタートアップの協働と大手プラットフォーマーへのアンチテーゼ〜

5月16日から5月18日の3日間、ヨーロッパ最大級のTech系イベント「VIVA TECHNOLOGY」が今年もフランス・パリで開催されました。世界各国から12万人以上を動員した本イベントに私も足を運んでみましたので、現地の様子をレポートします。

VIVA TECHNOLOGYについて

「VIVA TECHNOLOGY」は、日本ではそれほど知名度が高いイベントではないかもしれませんが、たとえばマクロン大統領が通商大臣だったころから今もなお深くコミットするなど、フランスでは国の威信をかけた取り組みと位置付けられ、今年は12万人超の来場者を集める欧州最大のTechイベントです。

Tech領域のトレンドや新技術、企業の活用例が披露される 欧州最大級のTechイベント「VIVA TECHNOLOGY」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Tech領域のトレンドや新技術、企業の活用例が披露されるだけでなく、中心テーマのひとつであるスタートアップ支援の名の下、「NEXT EUROPEAN UNICORN AWARDS」と題した大型スタートアップの表彰が行なわれたり、ハッカソンでイノベーティブな発想を発掘する機会があったりもします。

訪れてみれば、業界関係者ならずとも大変刺激的な経験ができるでしょう。

https://vivatechnology.com/

 

国内外の政治家、業界を超えた名だたる企業、新進気鋭のスタートアップが一緒になって議論する場

本イベントは、最近の大型Techイベント同様、展示会とカンファレンスから構成されており、カンファレンス会場では、今年もたくさんのセッションが行なわれました。

ここでまず注目したいのは、登壇者のバリエーションの豊かさです。

たとえば、マクロン仏大統領がスタートアップの経営者たちと対談したセッションもあれば、カナダのトルドー首相が、SNSを介したフェイクニュースの拡散やテロを煽動するようなコンテンツで損なわれたネットの信頼回復に向けて、新たにDigital Charter(デジタル憲章)を制定したと発表するセッションも。また、フランスというお国柄か、セネガルとルワンダというアフリカの大統領が登壇し、eGovernmentについて語るといった光景も、フランスの過去の歴史と次のビジネスを見据えたプログラムとして、興味深いものでした。

Tech系企業の主要メンバーやスタートアップだけでなく、国内外の政治家もセッションに登壇してお互いに意見を交わす様子は日本ではなかなかお目にかかれない光景でしょう。

 

デジタルテクノロジーはいかに社会に貢献できるか?

Tech系のイベントではありますが、多くの政治家が登壇することにも表れているように、ビジネスの話題以上に、プライバシーや環境問題など社会課題が語れれることが多い印象を受けました。企業からのプレゼンテーションも、そうした文脈が強く感じられました。

今回のイベント全体を通じて、GoogleFacebookといった大手プラットフォーマーへの批判の声が非常大きかったことは、強く印象に残りました。

特に、彼らのビジネスモデルについて「個人情報を得てそれを活用し、富を集めている」という指摘が声高になされ、そのアンチテーゼとして「社会に対してどのようにテクノロジーが貢献するか? そのリスクからいかに市民を守るか?」といったテーマが盛んに議論されていました。GDPRを大きなきっかけとして、各国で大手プラットフォーマーへの風当たりが強くなってきた現在、その議論をリードしたEUが自信を取り戻している、そんな風にも感じられました。

他方、ヘルスケアや環境へのインパクト、フードセキュリティや犯罪防止といった社会問題に対するテクノロジーの活用については踏み込んだアイデアが挙げられ、AIやマシンラーニング、データ活用が社会問題解決に貢献できるのではないか? とか、今後5年程度でどのような社会的インパクトを与えられるのか? といったことが今日の主要テーマとされていました。

この文脈で、フランスの製薬メーカーであるサノフィが意欲的な発表をしていたのでご紹介しましょう。ご存知の通り、サノフィのような製薬メーカーは、新薬を世に出すまでに、研究開発から膨大な数のテスト等を行なうわけで、当然そこには多くの時間と莫大なコストが費やされてきました。

しかし、「今後はAIのデータ解析によって開発効率を上げていけるはずだ」とサノフィは言います。そうなれば、より早く新薬を発表することができ、世界の疾病対策や人々の健康に貢献できるだろう、というわけです。最後に同社は、「それを実現させるためにも、データドリブンカンパニーになる!」と宣言していました。これは製薬会社の新たな有り様を想起させる発表だと言えるでしょう。

 

幅広い業界業種がブースを展開した展示会ゾーン

EU圏内やアフリカ圏だけでなく、中国や韓国、中南米からも本イベントに参加する企業や著名人が多く見られました。いくつかご紹介しましょう。

 

たとえば、いまEスクーターの販売を手がけている”世界最速の男”ウサイン・ボルト氏は、自社の製品を持ち込んでフランス国内でのPRを始めていました。また、中国のTech企業であるアリババのジャック・マー氏もセッションに登壇していましたし、報道を賑わせている”渦中の企業”ファーウェイもセッションで存在感を放っていました。

 

展示会には世界中のほとんどのクラウド&IT企業が出展していると言っても過言ではないほど様々な企業が並んでいましたし、こうしたイベントでは、これまであまり見られなかったコンサル会社もブースを出して講演会を行なっていました。

日本関連ではソフトバンク・ロボティクスが出展しており、ペッパーくんと記念撮影する来場者も多く見られました。

 

お膝元のフランス企業については、自動車産業からルノー、シトロエンが。観光業からはアコーホテルズ、放送業界からはTF1グループ、フランス郵政公社のラ・ポストやフランス国鉄(SNCF)といった国家の基幹産業が軒並み大きなブースを構えていました。

 

ブランド企業とスタートアップの共同開発技術が実務レベルに

各ブースでは、ブランド企業とスタートアップがコラボレーションして新たな開発した事例がいくつも紹介されており、実際にそのテクノロジーに触れる機会もありました。

たとえば、LVMHのブースでは、液晶パネルを組み込んだLouis Vittonのバッグの展示や、顧客に最適な香水をレコメンドするVoice Chatによるインタラクティブな仕組みや、ミラーに仕組まれた画像解析によって、コスメティクスを推奨するといった、体験ブースに多くの人だかりができていました。

多くの来場者で溢れるLVMHブース

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、ロレアルのブースでは、画面に顔を映しリップの色を重ねてシミュレーションし、気に入ったものを購入できるコスメの自動販売機を紹介されていましたし、デバイスで肌の色などをチェックしてそのひとにぴったりなファンデーションをオススメしてくれるような機能も紹介されていました。

こうしたラグジュアリーブランドやコスメティクスブランドによる、店頭での体験価値の向上に向けた取り組みの紹介は、非常に完成度の高いもので、早くからStartupを巻き込んでの研究開発に意欲的に取り組んでいることが伺えます。フランスの基幹産業の面目躍如といったところでしょうか。

ロレアルブースでは、マーケティングや製品開発に活用するツールとして、インスタグラムなどに投稿されている膨大な数の画像を鳥瞰的に把握・分類・解析してトレンドをダイナミックに把握するツールを紹介していました。AIによる画像解析を活用したこのツールは、すでに実装され、全社員がアクセス可能だという点は、驚きです。

AIによる画像解析を活用したツールの紹介

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ARの利活用の例としては、マジックリープが開発したという遠隔会議システムを欧州メガバンクのひとつBNPバリパが活用している、という事例が興味深いものでした。遠隔地同士の会議でも、ARを活用すればその場で対面しているような感覚で議論できる、というものです。

これを応用して、BNPバリパは、地図上の不動産物件の詳細をよりリアルな3D表現で確認できるシステムを活用しているとのこと。金融機関のような伝統的な業種はテクノロジーの活用が遅れている、としばしば指摘されることもありましたが、少なくともフランスではスタートアップと連携して生み出したテクノロジーを実務レベルで活用するまでに至っている、と言えそうです。

 

一部では「米国や中国の後塵を拝している」と指摘されていたEUが、行政トップの強いリーダーシップに後押しされてデジタルテクノロジー領域で復権をはかろうとしている様子がひしひしと伝わってきた本イベント。EUとして、AI領域に非常に注力していることや、スタートアップを育成しグローバル企業とのコラボレーションを強く推進していることがよく分かりました。果たして、このEUの取り組みが、いかなる成果をあげるか、同様に米中に遅れを取っている日本も注視していく必要があります。行政の産業育成への関与の仕方という点では、参考になる面があるのではないか、そんな気がします。

 

他方、デジタルテクノロジー領域のビジネスはルールなき開拓時代を終え、一定の規制の必要性が論じられ始めたことは注視すべきポイントです。

GDPR以降、EUは「この議論をリードしていく」という強い姿勢を示していますし、実際に世界各国に対して影響を強めているのは周知の通りであり、日本も当然その例外ではないでしょう。個人データ利用のルール改定や、大手テックプラットフォーマーへの課税問題など、デジタルマーケティングに影響を与えるうる政治的テーマに日本も深く関わりつつあります。

私たちも、こうした環境の変化を注視していく必要がありそうです。

 

 

Microsoft AzureにAIをのせたチャットボットサービスで顧客満足度を上げる

先日、アドビ システムズ様、日本マイクロソフト様と共催セミナー「カスタマーエクスペリエンスデーin 大阪」を開催いたしました。

その中で、日本マイクロソフト様が紹介されていたMicrosoft Azure*を基盤にAIサービスを乗せて展開したチャットボットサービスの事例が非常に興味深かったので、ここでもご紹介したいと思います。

 

日本マイクロソフト様

本ブログで紹介することをご快諾くださり誠にありがとうございます。またぜひご一緒できれば幸いです。

さて、以下は私が特に注目したトピックです。

 

顧客接点でのAI活用事例:進化するチャットボット

AI活用の中でも、コールセンターの業務をチャットボットに置き換えていく、というのは王道のやり方だと言えるでしょう。

セミナーでは、「コールセンタースタッフでは8時間くらいまでが対応上限であるところを、チャットボットを使って24時間対応できるようにしている」とのSBI リクイディティマーケット様の事例が紹介されていました。

同社だけでなく、こうした取り組みは着実に増えていると聞きます。

コールセンターに寄せられる質問内容は、「パスワードを忘れた」や「うまくアクセスできない」といった、サービスに関連する内容が多いと言われています。そうしたことにリアルタイムで対応できるようになれば、顧客満足度向上にもつながるでしょう。

他方、コールセンターには、さまざまな情報が集まるものです。データが無ければAIに学習させることもできません。それらのデータを常に蓄積させ、これをAIに学習させられる環境を構築していれば、チャットボットはどんどん賢くなっていけるはずなので、今後も早い進化が期待される分野だと思います。

 

SBI リクイディティマーケット様

人工知能 (AI) を活用した FX取引サービスの実現に向け、SBIリクイディティ・マーケット、SBI FXトレードと日本マイクロソフトが連携

https://news.microsoft.com/ja-jp/2017/02/15/170215-ai-sbi-microsoft/

事例ビデオ:

https://www.youtube.com/watch?time_continue=4&v=SxLp7bRD8FQ

 

前述のようなコールセンターだけでなく、まだ実証実験の段階も含め、最近は病院やホテル、大規模商業施設などのホスピタリティ系のサービスを提供する場面でもAIの活用が進んでいるようです。

近い将来、「ショッピングモール等の広大な敷地を有する場所で迷い、スタッフが見つからず途方に暮れる」といった心配がなくなるとしたら、顧客にとっての利便性がいま以上に高まることでしょう。

 

顧客接点でのAI活用事例:顧客に寄り添うチャットボット

大手コンビニチェーンを展開するローソン様の未来型コンビニに関する事例も紹介されていました。同社の取り組みは各種メディアでもよく取り上げられていますが、中でもLINE のチャットボット「ローソンクルーあきこちゃん」は特に有名ですね。

このあきこちゃん、ベースになっているのは高校生AIとして話題になった「りんなちゃん」なのだそうです。

りんなちゃんは、ご存知の通りMicrosoft社が高校生アカウントとして運用し、機械学習させていたAIです。ここで培った技術がクライアントに有効活用されている、というのは興味深いことですね。

ローソンの取り組みについては、MicrosoftAzureのサイトで詳しく紹介されているので、ぜひご一読ください。

 

ローソン様

▶もっと「人に近い」コンビニへ。ローソンの挑戦。その独自戦略とは?

https://www.microsoft.com/ja-jp/biz/nowon-azure/lawson.aspx

 

顧客接点でのAI活用事例:多言語対応のチャットボット

MicrosoftAzureの場合、日本語よりも外国語の方が実績は多いということで、旅行会社がAIを活用している事例も紹介されていました。なかには、日・英・中の3ヶ国語に対応するというケースもあるようです。

この事例は、海外のクライアントだけでなく、インバウンド需要に対応している企業にとっても一見の価値があるものだと思います。

MicrosoftAzureのサイトでは、JTB様の事例が取り上げられています。

2020年に向けて訪日外国人旅行客への対応を求める声はさらに高まることでしょう。そうした業界に携わる方にはとても参考になるのではないかと思います。

 

JTB

▶すべての訪日外国人の旅行客に満足を――AI や API エコノミーの仕組みを実装した観光支援アプリの提供で “インバウンド エコシステム” の実現を目指す、JTB

https://customers.microsoft.com/ja-jp/story/jtb-travel-azure-cognitive-bot-jp-japan

 

人材不足に対応するためのチャットボット活用

近年、主な働き手となる年齢層、いわゆる労働生産人口が減少していることが問題視されています。また、製造業を中心に、熟練者の技術を次世代の担い手に引き継ぎ切れないことが課題になっているとも聞かれます。

そうした問題に端を発する人材不足に加え、季節によって仕事のボリュームが大きく変動し、ある季節は仕事が過密状態になり働き手のワーク・ライフ・バランスが崩れたり、顧客へのサービスレベルが一定に保てなかったり、といった課題を抱える企業もあるようです。

セミナーでは、そんな課題を解決しようと取り組む企業として、空調機器の世界的メーカーであるダイキン様の事例が紹介されていました。

エアコンが故障し、修理の依頼が集中する時期と言えばやはり夏前から夏場だそうですが、これまではその依頼に対応し切れないケースもあったようです。

これを、チャットボットで「どこに問題がありますか?」というふうに確認をしていくことで素早く一次対応し、顧客の不安をなるべく早く解消できるよう取り組みを始めた、とのことです。

 

ダイキン様

▶エアコンの故障診断に Azure AI を活用したチャットボットを導入、自動応答で素早く対応することで顧客満足のさらなる向上へ

https://customers.microsoft.com/ja-jp/story/daikin-bot-framework-azure-luis-app-sql-database-jp-japan

故障診断にチャットボットを導入し自動応答で応対すること自体は技術的には難しくないことだと思います。

しかし、近年のエアコンなどの機器はIoT化しているので、たとえばエアコン側から故障や不具合のデータがセンターに送られ、その情報を元により高度なサービスを顧客に提供していくことも可能になっていくのだろうと考えられます。IoTとチャットボットとの連携は、今後大きく広がっていくと予想されます。

 

言語周りの処理能力が飛躍的に向上したことで活用の幅がさらに広がる

最近は、音声を認識して自動的にオーダーリストを作る、というAI活用の事例も出てきています。これは飲食業や小売業から製造業まで、幅広い業界にニーズがありそうです。

ただ、たとえば飲食店でオーダーをする際、「AセットとBセット」と言いながら、途中でオーダーや数量を変更する、といったことは多々あるもの。そのため、音声データをそのまま文字起こししたままの状態をオーダーリストとして送ってしまうと、結局のところどれが最終的なオーダーか分からず、現場を混乱させてしまうことにもなりかねません。

しかし、MicrosoftAzureを活用した事例では、「最終的にはこういうオーダーですよね」という“まとめの生成”まで対応できるようになっています。これなら、精度が上がることで、ひとのスタッフが対応するよりもオーダーミスを防ぐことにすらつながるかもしれません。

AI活用の方法については、しばらくの間「どう活用したらいいのか分からない」「本当に使えるのか?」など、その可能性がイマイチ掴みづらいと言われる時期がありました。しかし、近頃は確実に実践的に活用がなされるようになり、実績も増えてきたように感じます。

今回紹介したような新しい取り組みを知ると、より多様なアイデアが湧いてくるでしょうし、新しいチャレンジを提案する機会も増えていくのではないかと思います。

 

その他、注目したいMicrosoftAzureの事例

チャット以外にも、データ分析に活用されているのも、見逃せません。

 

エイベックス様

▶より満足度の高いライヴ イベントの実現に向け、AI を活用した来場者分析システムを開発

https://news.microsoft.com/ja-jp/2017/09/01/170901-avex-microsoft-faceapi/

事例ビデオ:

https://www.youtube.com/watch?v=j89-o9EqhmY

 

電通

▶電通がスタートした日本初の「人工知能型 OOH 広告」

https://customers.microsoft.com/en-us/story/dentsu-media-azure-jp-japan

事例ビデオ:

https://www.youtube.com/watch?v=gSdoMXitIvw

 

*MicrosoftAzure

ビジネス上の課題への対応を支援するために絶えず拡大を続けるクラウド サービスの集合体です。世界規模の巨大なネットワークに対し、お気に入りのツールやフレームワークを使ってアプリケーションを自在に構築、管理、デプロイすることができます。

https://azure.microsoft.com/ja-jp/overview/what-is-azure/ より)

 

全体最適を考えることが会社を強くする。では、全体最適とは?

経営者にとって、社員全員が会社の経営状況や全体が進む方向性に関心を持ち、当事者意識をもって積極的に日々の仕事を進めてくれるようになることは理想の姿です。

しかし、「社員一人ひとりにどうやってそのことを考えてもらうよう促すか」は、難しい課題でもあります。

 

そこで、ひとつの方法として、電通アイソバーでは、少しでも会社全体の動きを知るきっかけを得てもらえるよう、毎週月曜日に全員参加の朝会を実施しています。ここでは、先日話したスピーチについてご紹介したいと思います。

 

「出る杭=全体最適を考えている人」という発想

先日、元ソニーの方でコンサルティングをされている方の著書を読む機会があり、その中での「出る杭」の話に目が止まりました。

「『出るクイ』を求む!ーSONYは人を生かすー」

これは、ソニーが昭和44年に行った新聞広告のフレーズで、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長し、米国をはじめ海外市場に挑戦しようとする当時のSONYらしいキャッチコピーです。

日本では、「出る杭」と聞くと、他と異なる視点を持ち、ユニークな意見を提示したり、慣習にとらわれない推進力を持ち合わせる一方、組織の秩序をかき混ぜたり、慣習を度外視するためチームワークに摩擦を生じさせたりする存在にもなりうるとして、ポジティブな面とネガティブな面の双方のイメージがあるかと思います。

しかし、著者は少し違った視点で、「出る杭とは、全体最適を考えている人」と解釈をしています。

 

なぜ、全体最適を考える人が“異分子”になってしまうのか?

会社や組織が大きくなると、多くの場合、自分の受け持っている仕事以外が見えづらくなるものです。また、それを最適に進めようとするため、当然ながら「部分最適な考え方」になっていくものです。

 

そうした環境では、毛色の違った発言をする「出る杭」の存在は“異分子”のように感じてしまうかもしれません。しかし、もしその“異分子”の考え方が全体最適を目指したものであったなら、むしろ組織にとっては有益であると考えられるのではないでしょうか?

 

当時のソニーは、創業者である盛田さんの「Think Globally, Act Locally」という企業精神があり、これを言い換えて、全体最適を考えて部門で行動する、というようなカルチャーがあったようです。それゆえ、そうした自律的に行動できる「出る杭」を求めていたのだと感じました。私も、考え方には強く共感しますし、電通アイソバーも全体最適を目指して活発に議論する企業であってほしいと願っています。

 

全体最適を考えて行動するとはどういうことか

言葉だけで「全体最適を考えて行動する」と言われてもピンとこない人もいるかと思います。そこで、私のバックグラウンドを踏まえて、会社をオーケストラに見立てて考えを巡らせてみたいと思います。

 

会社がオーケストラとなると、指揮者は私であり、社員のみなさんは演奏者ということになります。

 

そこで質問です。

みなさんが「演奏者として大切にしないといけないこと」と考えるのは、次の3つのうちどれでしょうか?

1:楽譜を理解して暗譜する(楽譜の内容を完全に理解する)

2:指揮者の指示をひとつも見逃さずに捉え、従う

3:周りの団員の音に耳を傾ける

 

じつはこの質問には正解がありません。

ただ、一流になればなるほど「3が大事」と答えるのではないかと私は考えます。

 

ひとつ例を挙げてみましょう。

クラシック好きでなくても、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団やベルリン・フィルハーモニー管弦楽団という名前は聞いたことがあるかと思います。

世界的に有名な楽団ですが、これらは別名「指揮者泣かせ」と言われています。

それというのも、楽団には独自の持ち味や音色があるので、にわかに招聘された指揮者にはその良さを引き出すのが難しいからだそうです。

 

そうした強い個性やカラーを作り出せているというのは、裏を返せば、指揮者に頼らずとも団員が自らの組織を強くし、カラーを自律的に生み出している証拠だと言えるでしょう。

 

この背景には、記されている楽譜の内容も音やリズムでさえも異なる中で、他の楽器がどんな旋律を奏でているか注意深く聞き、全体にとって最適な演奏をしている、という事実があります。

 

これを再び会社の話に置き換えると、

他のひとの強みやどんなことに取り組んでいるのかを普段の仕事を通じて知り、関心を持っていれば、全体は最適化して事が進んでいく、と考えられるのではないでしょうか。

 

現在、幹部メンバーには外部の研修機関で「会社全体の経営がどうなっているか?」を考える機会を持ってもらっていますが、そうしたことを考えるのは幹部だけの仕事ではありません。

ぜひ、みなさんにも同じように考えてもらえたら、と願っています。

 

その中で「こう仕事を進めた方がいいのではないか?」といった意見が出てきたら積極的に議論してほしいと思いますし、「社長に意見したい!」というのも大歓迎です。よろしくお願い致します。

Adobe Summit 2019 ビジネス変革へ 改めて考えるCXM: Customer Experience Management

毎年開催されているAdobe Summitですが、今年はサブタイトル「The Digital Experience Conference」が掲げられ、デジタルエクスペリエンスは次のステージに入っていることを非常に強く感じました。

「ダイアモンドスポンサーとして、電通イージスネットワークもブース出展」

Adobeは2018年にMA(マーケティングオートメーション)ツールMarketo(マルケト)、そしてコマースプラットフォームのMagento(マジェント)を買収しました。今後はBtoBからBtoCの領域、コマースをよりカバーできることにより、ユーザー認知のところからトランザクションまで、一気通貫してカバーできるようになったのが大きな変化です。

そのような大きな変化に伴い、CXMの再定義、またどのようにコミットしていくのか見直されています。

新しいデータをマネージメントするためのエクスペリエンスプラットフォームを再構築する動きは、海外からすでに始まっています。電通アイソバーとしてはグローバルなクライアントも多い中、今後より一層、意識を向けていくべきところだと感じています。

また2018年後半には、Adobe、Microsoft、SAPの3社がパートナーシップを提携することを発表されていますが、企業の持っている基幹データ、CRMデータとデジタルマーケティングで得られるデータを統合し、データモデルを作りクラウド上で使えるようにするプロジェクトOpen Data Initiativeを進めています。こうした事から、Adobeはグローバルなマーケティングプラットフォームとして、企業のデジタルトランスフォーメーションの非常に重要な役割を担っていくことになると思いますが、そのAdobeのMagento(マジェント)買収は、企業のコマースプラットフォームへの注目度を高めることになると想定しています。電通アイソバーとしては「CXデザインファーム」としてお客様と共にビジネスを更に広げていければと思っています。

 

急速に進化する、アジアのデジタルマーケティング

先日、Nikkei Asian Review主催のセミナーに登壇させていただきました。
アジアにおける、デジタルマーケティングは、経済発展とともに急速に進化しているのですが、日本のマーケターの皆さんが、そのことをあまり意識されていないのではないか、という危機感から、お話をさせていただきました。

どうも、デジタルというと、米国を先行事例として学ぶということが、これまでの慣例でしたので、なかなかアジアの動向に目が向かない。インバウンドや越境ECといった日本国内から見えやすい現象には注目が集まりますが、部分的な見方しかされていない印象があります。
マクロ的な統計で見ると、まず驚かされるのが、日本よりもデジタルシフトが急速に進んでいる点です。広告費で見ると、日本のデジタル比率は3割に満たないですが、例えば中国ではすでに6割、台湾でも4割近くがデジタル広告費です。2021年には、中国では、7割を超え、台湾でも5割を超えると予想されていますが、逆に日本では3割を少し超える程度と、変化はゆっくりだと予想されています(eMarketerの予想)。
そして、ECの普及という点で、アジアは世界をリードしています。一般消費財におけるECの利用率は、APAC全体ではすでに15%を超え、北米やヨーロッパの普及率の倍の水準です。APACの中には、オーストラリアや日本も含まれますが、両国ともEC化率は7%台で欧米並み。その一方、中国は23%。韓国が16%と市場をリードしています。ECの内訳をみると、モバイルの比率が高いのも、アジアの特徴で、ECにおけるモバイルの比率は、インド、中国、韓国では6-7割と、非常に高くなっています。
インターネットがモバイルの普及とともに浸透していった新興国市場では、モバイル、ソーシャルメディア、EC(特にモバイルコマース)が足並みを揃えて利用者を増やしており、固定回線+PCでネット環境が整備されて来た先進国とは、大きく異なる発展を遂げています。モビリティ、コスト面でのフレキシビリティ(プリペイドでも使えるとか、FreeWifiとか)、ソーシャルメディアとの深い連携など、インターネットの普及を加速させる要素が詰まっていたわけですが、メディア環境が未成熟であった故に、その活用度合いは、先進国を凌駕する勢いです。
この背景には、①アジア発のDigital Disruptorの存在、②アジア各国の国家戦略、③ミレニアル世代の存在感といったことがあげられるかと思います。
すでにアジアには、巨大な中国市場を背景にBAT(Baido, Alibaba, Tencent)といった企業価値でも世界トップレベルのネット企業が存在し、それに続くように、多くのユニコーン企業が存在しています。中国におけるユニコーンの数は、米国に匹敵する規模になっていますし、BATのような先輩格の企業が多くのスタートアップに出資し、彼らの成長を支援しています。
こうした企業群の成長の背景には、国家戦略としてデジタルインフラの整備やスタートアップ企業の育成を政府が掲げている、ということがあります。かつて日本でもe-Japan構想というのがありましたが、中国やインドでは、デジタルインフラの整備が国主導で行われていますし、ベトナムではIT人材育成、シンガポールではスタートアップ育成が強力に推し進められています。日本では、ここ最近、国の戦略としてITやデジタルというテーマが掲げられることが無くなってしまいましたが、その間にアジアの環境はトップダウンで変わろうとしています。
消費者の側に目を転じると、アジア各国では、いわゆるミレニアル世代が人口構成の約3割を占め、デジタルネイティブとしてデジタル化された消費生活を積極的に需要し、ユニコーンやスタートアップの成長を支えています。日本では、ミレニアル世代は17-8%程度と見られ、今後の景気の先行き感や所得水準が上がりにくい環境から国内消費を必ずしもリードしていないわけで、日本国内にいると、その影響度合いをイメージすることが難しいかもしれません。アジアでは、経済発展とともに所得水準も向上し、モバイルインターネットで海外の情報にも触れ、モバイルコマースを活用し、海外旅行も積極的に楽しんでいる世代でもあります。ソーシャル上でもアクティブであり、日本のマスメディアのような伝統的メディアが未成熟であった環境からの変化を考えると、飛躍的に情報消費量も拡大しているはずです。

こうした環境に向けて、日本企業がマーケティングを行っていくのであれば、日本と比べて、相当にデジタルに注力をすべきでしょう。モバイルファーストは言うまでもありませんし、ソーシャルの影響力の大きさを十分認識しなければ、マーケティング予算を無駄に消費することになります。新しいテクノロジーへの受容性も日本より高く、それ故、ありふれた手法のデジタルコミュニケーションでは埋もれてしまうかもしれません。
Isobarは、日本を含めアジアの11の国と地域に合わせて約2800名のスタッフがおり、各国でグローバル企業、ローカル企業の双方に対してデジタルマーケティングの支援を行なっていますので、オフィス間のネットワークを活用しながら、それぞれの市場の状況を踏まえた戦略立案・コミュニケーションプランニング等の支援を日本の皆様にもご提供していきたいと思っています。

Adage Agency Ranking 2016

恒例のAdage Agency Reportが発表されました。
昨年のこの時期は、まだRazorfish Networkに繋がっていたことを考えると、自分たちの環境も急速に変化したと思いますが、このリポートを見ると、改めて、この1年の変化の大きさも実感します。ちなみに、IsobarはDigital Agency Networkとしては、14位にランクされています。
 Agency Companies Ranking Digital Agency Network Ranking
このランキングを見ると、従来の広告会社の影が薄くなり、Accenture, Deloitte, IBM, Epsilonといった「異業種」参入組が更に拡大しているという印象を持たれると思います。AccentureやIBMの数字の伸びが半端ないですから。
(ちなみに、日本勢の前年比がマイナスなのは、円ドルレートが1割以上円安に振れたことが要因ですので、ご注意。こうしたレポートでは為替変動を意識しておく必要があります。)
このランキングに関して、理解しておくべきなのは、あくまでAgency側の自己申告によって登録されるということです。
毎年2月に締め切られる自己申告のデータに基づいて、ランキングが作成されますが、Revenueなどのデータは、Adage側のカテゴリーに則して記入されます。その中にDigitalもありますが、申告のための調査票には細かな定義は書いてありません(笑)。なので、申告する側の判断で、デジタル領域の数字は決められている訳です。
異業種をまたがったランキングとなっているため、このDigitalのカテゴリーでそれぞれの会社が言わんとしていることは、実際には随分異なっているかと思います。なので、ひとくくりにDigital Agencyと言っても、それぞれがどのようなビジネスを中心に行っているのか、冷静に考えてみる必要があります。
また、近い将来にAdageが新しいカテゴリーをつくったり、定義を変えてくる可能性もあります。メディアとしては、読者に興味を持ってもらえる切り口を常に考えなければいけない訳ですから。
今後も新たな異業種の会社が入ってくる可能性大だと思います。例えば、ITサービスでAccentureなどの競合としても名前が挙げられる、インドのTCS、Infosysといった会社もDigital領域を伸ばしているとアピールしています。最新のTCSの決算発表を見ると、4QのRevenueの15%はDigitalから、ということですから、仮に同じ比率で年間のDigitalによる収益を計算すると、$2.5bilionにもなるわけで、Adageに登録されれば、いきなり上位に入ってくることは必至ですから。
ちなみに、IR資料を見ると、Accentureは、本会計年度上期の収益は、前年比103.6%、IBMは1Qで-4.6%と前年割れをしています。既存事業からデジタルマーケティング事業へのシフトは、IR対策上も重要なアピールポイントなのだと思います。

IoTとAIで何が変わる

当社では、毎週月曜日の朝に、「朝会」という全社会議をやっています。私も毎週、5分程度(実際には、しばしば10分ぐらい話してしまうのですが)の話をするのですが、このところしばしばテーマにあがるのが、IoTとAIです。
我々のビジネスの周辺には、新しいテクノロジーが次々と押し寄せてきますが、その中で、マーケティング領域に本質的な変化をもたらすものとして、IoTとAIについては、きちんとした理解をしておく必要があると思っています。
表層的な技術によるインパクトは様々ですが、IoTとAIによってもたらされる変化をなるべくシンプルにまとめると、こんなことかと思っています。
  • モノが常時、インターネットに繋がる
  • モノだけではなく、ウェアラブルなど周囲の様々なデバイスにより、人も常時繋がる(Internet of humanとか Human internet of thingsとも言われる)
  • 大量のセンサーがばらまかれることで、大量のデータがネットワークで流通する
  • 大量のデータをさばくために、AIが活躍する
  • ある程度のインタラクションは、AIが人の前さばきをする
もう少しイメージを膨らませてみましょう。
モノやヒトが、常時繋がることがどの程度インパクトあるかと想像してみると、インターネットが、ダイアルアップから常時接続になって、我々の情報環境が一変したようなことが起きてくるのだと思います。
当時、ネット上での様々なサービスがプル型からプッシュ型に変わってきたように、モノが我々の行動を促すようなことがおきてくる。冷蔵庫の残り物からメニューを提案するといった、「インターネット冷蔵庫」のアイディアは、10数年前からありましたが、現実性を帯びてきますし、エアコン、洗濯機、掃除機といった白物家電は自動化を進めつつ、ユーザーのフィードバックを受けながら更に機能を向上させて行く可能性があります(もちろん、コストと提供される価値のバランスの中で変わってくるのだと思いますが)。
車や家といった、高額な耐久消費財においても常時接続は大きなインパクトをもたらすはずです。単価が高い商品だけに、手を加えやすい。またモノを売るだけでなく、その後のサービスもセットされて消費されることが主流の商品ですから、尚更です。
IoT
IoTにはセンサーが不可欠ですが、センサーの発達・普及によって、収集できるデータの種類や質が大きく拡大するということも見逃せません。従来取れていなかったデータがとれることで、これまで見えていなかったことが「見える化」するわけです。
ヘルスケアの分野で考えてみましょう。普段、年1回の健康診断を受けている人が、ウェアラブルなどで常時健康状態をモニタリングできるようになれば、どうでしょう?何か異常がおこれば即時に発見することが出来る。重い病気の発見が早まり早期治療が実現、医療全体の在り方を変えることになります。また、データを点ではなく、線でみることができるようになり、それまで分からなかった因果関係が見えてくるということもあるでしょう。こうしたことが、医療判断の精度を高めることになります。
IoTによって、かつて無いほどのデータが流通することになりますが、そうなると、それらを処理し分析することも一苦労。そこで、AIの活躍が不可欠になります。考えてみれば、機械学習は大量のデータの存在が前提としてあって、それらをインプットすることで人工知能は賢くなっていきます。インターネット以降の大量データの発生が現在のAIの進化とブームの背景にあるようですが、このAIブームは、IoT時代になって、いよいよ本格化してくるはずです。
そして、進化したAIは、コミュニケーションの領域でも、更に活躍の場を拡げ、botに代表されるようなユーザーインターフェイスの裏側を支える存在として、不可欠のものになっていくはずです。我々が日常使っているあらゆる家電製品の中にマイコンが入っているように、スクリーン、音声を問わず、UIの中にはAIが仕込まれているのが当たり前になるまでに、そう時間はかからないでしょう。
こうした新しい技術トレンドがマーケティング・コミュニケーションにどういった影響をあたえるのか、マーケターは常にアンテナを張り、本質的な理解を深める必要があると思います。

Isobar network への参画

先月、発表させていただきましたが、当社は来年1月1日より、電通アイソバーとして、Isobar Network の東京拠点として、活動を開始します。6月末にRazorfishとのJVを解消し、電通iXとしてスタートして間もないタイミングではありますが、グローバルとの連携を強化することはデジタルマーケティングの領域で不可欠と考え、早期に今回のブランド変更を進めるに至りました。

フォレスターリサーチによりLeaderに認定
フォレスターリサーチによりLeaderに認定
Isobarについては、まだ国内ではそれほど知名度がありませんが、海外では、地域の差はありますが、デジタルエージェンシーとして急速に注目を集める存在になっています。
ごく最近では、Forrester Researchの調査で、Isobar USがDigital Experience Service ProviderとしてLeaderに位置づけられ、また中国では、Ogilvy OneとRazorfishと並んで、Lead Digital Agencyとして位置づけられています。2014年には、カンヌでブラジルオフィスがInnovation Lionを受賞するなどサービス開発における先進性でも高く評価されています。
Razorfishと長らく仕事をした経験をふまえると、Isobarの良さは、真にグローバルなネットワークでビジネスを展開しようとしている点です。米国からスタートしたAgencyの多くは、やはり米国市場が大きい故に、海外進出はそれほど積極的ではありません。自国の市場が大きく、かつ依然として成長している故に、海外より国内に目が向きがちなのです。技術的にも新しいトレンドは米国内にありますし、本社を米国にもつクライアントは、米国のビジネススタイルを海外に展開しようと考えますから、まずは米国市場を押さえることが第一優先になってしまうわけです。

Innovation Lionを受賞したFiat LiveStore
Innovation Lionを受賞したFiat LiveStore
それに対して、Isobarは、40カ国以上にビジネスを展開し、アメリカ、アジア、EUと、どこか一極に集中すること無く、水平的にネットワークの拠点それぞれが成長をしています。
元々UKに本社を置きながら、現在ではグローバルCEOを台湾出身のJean Linが担っているというのも、象徴的です。
すでにグローバルで4000人を超える陣容となり、Global Digital Agencyとしては、大手に位置づけられる規模になっています。このネットワークを駆使して、日本国内のお客様に優れたサービスを提供するとともに、日本から海外に向けて新たなビジネスを拡げていきたいと思います。

ベトナム雑感

先月、当社のラボのある、ベトナム・ホーチミンを訪問してきました。
ラボを開設してから1年近く経っていて、都度、報告は受けていたのですが、実際に現地に行ってみると、いろいろ新しいことに気づかされました。
ベトナム全体の人口は9000万人で、平均年齢27歳という若さ。内、ホーチミンには、900万人と、1割の人口が集中しています。
街中を歩いていて驚くのは、Free WiFi網が張り巡らされ、若者がみんなスマホを持っている、という点です。中堅のエンジニアの月給が350USDぐらい(JETRO 2013年末調べ)なのに対して、その2.5倍近い金額のiPhone6を持っている若者も少なくありません。
PCは持っていなくても、スマホ経由で情報収集ができる訳で、そのせいか、欧米のカルチャーもじわじわと受け入れられているようです。象徴的なのが、スターバックスで、一昨年1号店がオープンしたのですが、現地のコーヒーのショップ3、4倍も高いにも関わらず(屋台のコーヒーと比べるともっと高いです)、現地の若者でにぎわっています。コーヒーの値段は、日本と同じぐらいで、現地の若者には、かなり高いはずなので、観光客ばかりかと思いきや、そんなことはなく、市内に11店舗を構えるまで広がっています。

 

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ホーチミンの夜景

ベトナムの所得水準に関しては、一般的な調査ではわからない点もあるようです。いわゆる袖の下的なお金のやり取りが、様々な場面であるようですし、また、ベトナム戦争の影響で難民となったベトナム人が「越僑」となって海外から送金をしているようです。高額なスマホが売れたり、スタバが賑わっているのも、そうした統計上把握できないお金によるものかもしれません。
スマホが普及しているとなると、ECも広がっているのではと思いましたが、残念ながら、ECの普及はまだまだで、クレジットカードの普及率が低く、物流網が整備されていないことが理由のようです。とはいえ、モノを買う際に、ECサイトでチェックはするという声もあり、身近な存在になってきているのは、間違いなさそうなので、インフラ次第でブレイクするかもしれません。イオンなどの大手モールも進出しているわけですから、日本でスーパーマーケットが展開しているような、リアル店舗を起点とした自社配送によるECなら、実現可能なのでは?などと想像してしまいます。

さて、当社では、現在、Web開発・運用のオフショア拠点として、ラボを設けているのですが、実際運営してみて、ホーチミンでよかったと思うのは、1)理工系大学の卒業生多く、比較的優秀な人材が採用できる、2)親日の人が多く、日本企業で働くことにポジティブである、ということです。1)については、ASEANの中で経済発展が後発であったために、経済政策上IT領域に重点が置かれていて、理工系大学が多く存在しているためだそうです。2)については、過去の歴史上の国際関係が色々影響しているのですが、現在中国とは紛争状態にあったり、ベトナム戦争の影響か、米国企業に対して抵抗感のある人もいる、ということも影響しているように思います。
私たちにとって、何よりうれしいのは、日本企業が歓迎されているということです。やはり、メンバーの方々には気持ちよく、モチベーション高く働いてほしいですし、その意味では、働きたいと思って入ってくれることが、まず大前提。当社では、東京から社員を派遣してハンズオンでナレッジをシェアしながら、日本で求められる品質や業務のプロセスについて理解してもらい、それらを身につけてもらいながら、具体的な案件に入ってもらっていますが、皆、勤勉で意欲が高いので、スキルアップも早いです。
日本でのエンジニア不足が叫ばれるようになって、ずいぶん時間が経ちますが、改めて現場をみていて、今後は、国際分業しないと無理なのだろう、と思います。とかくオフショアというと、ローコストな開発・オペレーションというイメージが先行しますが、いずれは経済が発展し、コストメリットがなくなるのは必至です。なので、将来も見据えて、どこまでの分業ができるのか、その目指すべき姿のためには、投資もしつつ人材育成を現地でも行うということが、重要というのが私が受けた印象です。
より大規模なプロジェクトに入ってもらえるように、これからも一歩一歩着実に、体制を強化していきたいと思います。

電通iX 始動、そして多様性のあるグローバルへ

いよいよ本日から、新ブランドで会社がスタートしました。
朝一の全社ミーティングでは、電通グループのデジタル&グローバル戦略について社員に改めて説明をし、今後私たちが期待される役割と、世界中のネットワークによって広がるビジネスの可能性について、話をしました。
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5月の末にPublicisとの合弁解消を発表して以降、Isobarや360iなど海外のネットワークの経営陣と会話をスタートさせたのですが、こちらが思っている以上に、先方の期待感が大きく、ちょっと驚いています。Razorfishと長らく仕事をしてきたイメージが、プラスに働いているのだと思うのですが、逆にその期待に応えていかねば、と気合いも入ります。
世界を見渡すと、国毎にデジタルマーケティングの置かれているコンディションは様々で、中国に行けば、ソーシャルを軸としてキャンペーンを設計するのが当たり前ですし、米国なら、Razorfishでも経験しましたが、企業の統合的なマーケティングプラットフォームの構築を支援するようなビジネスが非常に重要になっています。欧州では国をまたいでプランニングするのが普通なのが、東南アジアでも広がってきていますし、メディア環境や生活者のデジタルリテラシー、インフラなど様々な前提条件の違いが、多様性を生み出しています。
最近思うのは、その事を理解、認識できる事が、非常に重要なのではないか、ということです。
かつては、タイムマシン経営ではありませんが、米国発のマーケティング手法が数年遅れで日本でやってくるので、米国を見ていれば、OKという感じがありましたが、それも今や、昔の事のような気がします。ネットのインフラやメディア環境の変化は、新興国ほど急激で、そのことが、生活者の消費行動をドラスティックに変化させ、そうした中で計画されるデジタルマーケティングの方に、新たなアイディアのヒントが隠れていたりするのではないか、と感じます。
今日の新たな船出とともに、電通iXでは、日本を起点に、真にグローバルなデジタルソリューションを提供できる体制を整備して参りたいと思います。