「インターネット・トレンド2019」の注目点

 

クイーン・オブ・インターネットこと、メアリー・ミーカー氏による『インターネット・トレンド 2019』が公開されていますが、毎年この時期に恒例となっているこのレポートには、11のテーマが挙げられており、インターネットやテクノロジー関連だけでなく米国内の移民問題やヘルスケアに関する課題、米中問題などについても語られています。

ここでは、このレポートから私が特に注目している点を紹介したいと思います。

 

インターネット関連ビジネスは、依然多くが成長分野として力強い

まず、米国国内のレポートではありますが、Eコマースの成長は12.4%と引き続き力強い成長を遂げていることが指摘されています。リテールセールスの成長率が2%程度なことと比較すると、その伸び率は相当なものだと言えるでしょう。

インターネット広告への出稿については、前年比で25%の伸びであったと記されています。3〜4年の中期視点で見ても、その成長率は20%なので、インターネット広告は依然、大きな成長分野です。ただ、一方で日本のインターネット広告の成長は2桁成長はしているものの、ここまでではなく、過去数年、数ポイント程度下回り続けています。どこに違いがあるか、我々は認識を深める必要があるでしょう。

ただし、インターネット広告にも変調も見られています。グローバルでのレポートでは、たとえば、GoogleやFacebookの二強の成長はやや鈍化しており、Amazonやツイッター、Pinterestの伸びの方が強い、という傾向が見られると分析されています。GDPRほか、各国が個人情報保護の法令を強化する今日、この2社の評価がどのように変化していくか、引き続き注視していくべきでしょう。

また消費者の利用時間で見ると、主要プラットフォームの中で最も利用時間が伸びているのが、YouTubeとInstagram。動画やビジュアルコンテンツがマーケットを牽引している状況が伺えます。

 

フリーミアムは今後のトレンドになる

今年のレポートで注目すべきトピックとしてあげられたのは、フリーミアムとデータ活用です。

フリーミアムは、昨今のネット系ビジネスの中でもは外せないビジネスモデルですが、SpotifyやZoom、Google Suiteのように、サービスを一部無料で提供し、有料サービスへの加入を促すこの仕組みは、広く無料の「利用者」を獲得し、その後課金できる「顧客」になってもらうということで、提供されるサービスによる顧客満足度が重要になってきます。

たとえば最近IPOを成功させたZoomは、ここ最近のIPO企業の中では、すでに利益を上げているとして注目されていますが、ネットプロモータースコアが他のサービスより圧倒的に高いそうです。

顧客満足度を高めるためのサービスに投資する一方、フリーミアムモデルを採用することで、顧客リードを獲得するための費用を大きく削減する、というアプローチです。

 

顧客満足度という観点から、STITCH FIXもレポートの中で紹介されています。こちらはフリーミアムモデルではありませんが、同社は、契約者に対して、プロのスタイリストとAIが選んだ服を数点、毎月送り、気に入ったものを買い取ってもらう、というビジネスモデルを展開しています。購入のコミットメントは無いので、その点では利用のハードルを低くしています。サービス開始時から、新たなファッションビジネスとして以前より注目されていましたが、現在では300万人まで会員数を伸ばしており、データに基づくパーソナライゼーションの精度を高め、高い利用率を実現しているようです。

 

フリーミアムなどの手法により、顧客にサービス利用のハードルを下げ、顧客満足度を高めていくことに注力することで、ビジネスをドライブさせていくというアプローチは、マーケティングコストの考え方も従来とは異なってきますので、私たちも十分注視しておく必要があります。

 

データエコノミーの本格化に向けて不可欠な視点

Internet Trendsからちょっと離れますが、データ活用に関して、日経新聞に興味深い記事がありました。「データGDP」日本は11位という記事で、アメリカのタフツ大学が調査発表した資料によれば、データエコノミーでリーダーシップを発揮している国の上位は、米国や中国、スイスや韓国であり、日本は11位に留まっているとのことです。

この評価の指標には、データのボリューム、利用数、利用者、データに対するアクセサビリティやコンプレクシティが挙げられるとのこと。こうした指標において、日本が低評価なのは、データの活用が非効率な状態になっており、特に政府が保有する情報へのアクセサビリティが低い点。

また、大企業がデータを独占していてスタートアップ企業がデータをうまく活用できていない、といった点も原因とみなされているようです。このような状況が続けば、「日本の今後の経済活動等に影響が及ぶおそれがあるのでは」との懸念もされているとか…。

 

これに関連して、他にも興味深い記事が出ていました。日本のある地方自治体では、データ活用を積極的に推進しているものの、本来狙ったターゲット層には全く活用されていないと。たとえばバスの乗車数をリアルタイムに発信しているにも関わらず、これを利用する若者が少なかったり、子育て支援のアプリを提供しているけれど必要としている子育て世代の認知度が低かったり。

つまり、行政側の目論見と想定される利用者との間にギャップが見られる、というわけです。こうしたミスマッチは、データエコノミーを推進していく上で、致命的だと言えます。

このようなケースを見ますと、私たちは、ユーザーニーズを見極め、顧客視点でのデータ活用を提案することを、より積極的に推し進める必要があると痛感します。

 

さて、データ活用について、Internet Trendsに戻ると、2000年以降、成長を続けている企業は「データプラミングツールを活用している」との指摘があります。「プラミング」とは、水道の配管のことですが、データを上手くコントロールしながら流していくようなツール、と解釈すれば良いかもしれません。データの収集からチャネルとのつながり、データオプティマイズも含めてきちんと連携させていくためのもので、ここでは、Salesforce、Slack、UiPath、Looker、Confluentなど様々なツールを活用して成功している企業事例が上げられています。データ活用のためのツールが数多くクラウドサービスとして提供される中で、こうしたツール活用の優劣がビジネスの成功を左右することにも繋がる、と言えそうです。

 

電通アイソバーとしては、顧客視点に立って「CX(カスタマー・エクスペリエンス)に合ったデータ活用が実現できているか?」「その際に、データをうまく活用するためのツールをどう選定し利用していくか?」を考え、提案することが重要だと考えています。