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2019.9.03 開催セミナーレポート

グローバルから見るデータドリブンEコマース 〜ウェブショップをもっとも重要なストアとして成功に導くために〜

データとカスタマーエクスペリエンス(CX)の両方から、ブランドのグローバルEコマースの変革により、どのように売上やブランドを成長させているのかについてご紹介。

さまざまなブランドの販売チャネルで、大きな変化が起こっている。EC経由でのリテールの重要性が世界的に高まっており、驚くべきことに2019年の世界全体でのEC経由の売上は、3.45兆ドルに達するとの予測がなされていると言うのだ。さらに、2020年には4.21兆ドルにまで成長するとの見込みも示されている。この売上高は、2016年の世界全体でのリテール売上の13.7%に匹敵するほどだ。

そうした環境を支えるのが、ECサイトやマーケットプレイスだ。今日までに、世界では大小合わせて2,400万のプラットフォームが運営され、販売チャネルとして利用されている。

このような環境にも、国別に特徴が見て取れる。代表的なのはUSの例だ。USのリテールでは、DTC(Direct-To-Customer)やマーケットプレイスのコンビネーションが進んでおり、業界全体の売上を牽引している。

一方、ECでの売上高の割合がリテール売上全体の33.6%を占めると言われる中国では、マーケットプレイスや「WeChat」のようなモバイルプラットフォームの利用が活発な点が特徴と言えそうだ。また、中国はもちろん、アジア全域において、モバイル経由の消費が活発であることも見逃せない。

他方、EU圏内ではECの成長率がほぼ横ばいの状態が続いている。また、ラテンアメリカでは、インターネット環境の整備といったインフラ面での問題がこの分野の成長のボトルネックになっているものの、伸び率は堅調だ。

そうした世界の中で、日本市場はどのような特徴があるのだろうか? 電通アイソバーのチーフビジネストランスフォーメーションオフィサー兼電通イージスジャパンのヘッドストラテジストであるEmmanuel Floresは、次のように表現する。

「日本の市場は非常に成熟しており、アジアパシフィックにおいて中国に次ぐ大きな市場規模を誇っている。2018年のEC売上は、956億ドルにもなっているほどだ。この背景には、インターネットの普及率の高さ、EC利用者数の多さ、ひとりあたりのECでの購入金額の高さが挙げられる」とした。

Emmanuelによると、このような日本市場は「まだまだEC市場として成長の可能性を秘めている」とのことだ。その理由として挙げられるのが次の点だ。

1. たとえ日本のEC利用者数の伸びが鈍化しても、5年以内はひとりあたりの購入金額は、2022年までに12.7%程度伸びる。
2. 市場が飽和状態に陥っているUSやUK、韓国と比較して、さまざまな部分でチャンスが残っており、成長の余地がある。

では、こうした市場環境をリテールブランド側の視点で語るなら、どのような話になるか?  ここでは、「データをどう活用してECビジネスを成長させていくか?」について、7月29日に開催された「Commerce Marketing Conference(主催:宣伝会議 編集部マーケティング研究室)」での、電通アイソバー兼電通イージスジャパンのEmmanuel Floresと、アイプロスペクトのコマース部門の責任者であるNate Shurillaの言葉からそのヒントを紹介したい。

ブランドの悩みは共通している

EC経由での販売を行なうにあたって、ブランド側が抱える課題をまずは整理してみたい。これまで、アジア太平洋地域の19か国、グローバルでは145か国で、メディア、パフォーマンスマーケティング、テクノロジー、クリエイティブのサービスを展開してきた電通イージスネットワークがクライアントから受けた相談は次のような点だ。

●プラットフォームは何が最適なのか?
●自社サイトの良し悪しを知りたい
●競合の動向が知りたい
●どのチャネルの顧客が活発か
●オンラインとオフラインをどう繋げれば良いか
●Amazonのランキングをどうやったらあげられるか
●プラットフォームごとに価格戦略をどう変えればいいか
●顧客の声をどう集めて、どう使えばいいか
●製品の在庫切れがどうして起きるのか
●利益をどうやって上げれば良いか
●どんなプロモーションが有効か
●顧客の購入額はどうすれば伸ばせるのか

データを活用したECビジネスの可能性

前出の課題を解決し、クライアントのデータドリブン型コマースを推進するため、アイプロスペクトでは、2019年4月から5月の間に28市場の主要100社に対し、調査を実施。その結果から、現在、1から5のスケールのどこに当てはまるのかをスコアリングできるベンチマークの作成を行なった。

アイプロスペクトが考案したフレームワークの項目とその理由は次の通りだ。

●利用しやすさ(AVAILABILITY)

調査対象の多くの企業は、オンラインチャネルで戦略を決定し、従来のオフラインチャネルと同様にそれらを統合し始めている。現在、機会を最大化するために注力すべきは在庫管理だ。必要な在庫レベルをより適切に予測する方法を見つけ、消費者が商品を探しているときに常に利用できるようにすることが強く望まれている。

●見つけやすさ(FINDABILITY)

有料メディアとオーガニックメディアの最適化には大きな偏りがあるが、オンラインへの参入障壁の低下に伴う同業他社との競争の高まりに対処しようとするには、まだ改善の余地が多くあると考えられるだろう。

●購入しやすさ(BUYABILITY)

購買にあたっては、適切な価格設定とプロモーション戦略を行なうことが、EC経由のリテール売上の向上に寄与すると言える。

●リピート率(REPEATABILITY)

顧客管理(CRM)システムなどによって、販売後も消費者との関係性を継続することが可能になっている。しかし、まだ完全に実現されていない分野でもある。プラットフォーム内でのユーザーの行動を知ることはもちろん、レビューやソーシャルメディア上での反響等を顧客のフィードバックであると認識し、これを活用することが大切だ。また、特定の顧客に最適な特典プログラムを提供するなどしてエンゲージメントを高めることは、売上のさらなる向上に貢献する。

Nateは、すべての戦略設計において最適なプランを構成するうえでのヒントは「消費者が残したデータシグナルにある」とした。

どの商品を検索し、どの商品と比較し、購入したのか? という情報は、顧客がECを利用するパターンや傾向を理解する上で重要だ。これをもとに、最適なパーソナリゼーションを実施できれば、「顧客化のために必要な顧客獲得コストを50%削減し、売り上げを15%増やし、マーケティング予算効率を10-30%改善することも可能だとの調査もある(出典:HBR – Magento presentation deck (add source) )」と、Nateは述べた。

データシグナルなどの情報を見える化するソリューション

顧客がPCとスマホのブラウザ上でどのような行動をしているか? 最終的にどこで購入しているか? といった情報は、把握可能だ。また、顧客が購入に至るまでのweb上での体験を観察することは、以降のプロモーション戦略等を立案する上で、とても強力な情報になり得る。

前述のようなデータの扱い方について示すとともに、一方でNateは、「日本のECは流動的な部分が多い」とも、指摘した。たとえば、「髪の色」という検索順位が、カテゴリごと大幅に上がったり下がったりし、その検索結果として出てくる内容にはロングセラー商品だけでなく、新商品も含まれるという特徴があるとのことだ。

このような競争環境の中で、より高い検索結果順位をキープしようとするなら、前述の戦略ほか、コンテンツの充実が欠かせない。たとえば、画像や商品説明を充実させることで、競合他社だけでなく、サードパーティの売主との競争にも勝ち得るだろう。
だが、そのためにはキャンペーンマネジメントや競合の動向、キーワード調査等の精緻な分析結果をなるべく短期間で手に入れられる環境も必要だ。

しかし、「これを人力で行なうのは現実的ではない。そこで、アイプロスペクトでは独自の管理ツールを構築した」と、Nateは「CIO(Commerce Inteligence & Optimization)」を紹介した。このソリューションは、実際にAmazon.co.jpに出店するブランドでも活用されているとのことだ。

レポートを元にしたストラテジーマップ作成とその効果

レポートで知り得た情報を元に、どのような施策が求められるのか?
Nateは、「これまで、顧客を“引っ張り込もう”とする施策が取られていたが、顧客の生活動線に寄り添うよう戦略を練り直す必要があるだろう。また、当然ながら『売り切れたら売れなくなる』のだから、適切な在庫管理は引き続き重要だ。また、これまで同様、SEO/SEMによってECサイトの検索順位を高く保つ必要もある。これは、Amazonやロハコのようなプラットフォーム上でも同じことが言える」とし、先に示した4つの指標のスコアを高く保ち続けるよう取り組むことで、EC経由の売上を伸ばすよう努力し続けることが重要だ、と述べた。

実際に、前出のソリューションで得られたレポートによって課題を分析し、ストラテジーマップを作成・実践したことで売上を伸ばした同社のクライアント例は少なくない。

たとえば、ドイツのファッションブランドでは、コンバージョン率が25倍になり、検索結果のランキングも34%上昇。オーガニックの流入も79%増加するなどし、EC経由の売上向上を達成したと言う。

本当に“強い”ECブランドは、360度の対応をしている

確かに、web上での競合対応やプロモーション施策、価格設定の戦略を設計することは大切だ。しかし、Emmanuelは、「本当にEコマースに強い企業は、顧客に寄り添うために360度対応をしている」とした。

そうしたブランドの中でも、2016年からアイソバーと共に「2020年までにEC経由の売上を40億ドルに成長させる」という目標に向かって取り組んでいるアディダスは好例だ。

「世界にあるストアの中でもっとも重要なストアはウェブショップである」と考えるアディダス。24時間利用可能で、地理的制約もなく、顧客自身のタイミングや好みに合ったパーソナルな体験ができるECを強化すべく、アイソバーと共にECストラテジーマップを作成した。

これをもとに、20以上の市場におけるサイトについて、決済の簡素化、ページあたりのロードタイムを平均47%改良するといったことに加え、24時間体制の顧客対応やオペレーションの強化、総合的なCX改善を徹底することで、質の高いアクセサビリティを担保。この結果、コンバージョン率を10.9%改善し、売上は3400万ユーロを達成した。

この取り組みは現在も続いており、グローバルでの一貫性を保ちつつ地域市場にも親和性の高い状態に保つべく、中東とアジア4地域のビジネス展開に、人的リソースやコストの投下が行なわれている。

EC展開による売上増を達成し、最も重要なストアへと成長させるために

講演の締めくくりに、Nateは次の3点をもって、EC展開の成功に向けたチャレンジを促した。

- 機会を理解する

ECは実店舗同様に重視すべきストアである。そのことを理解し、自社の現状の強みと弱みを整理し、フレームワークに応じてこの分野を成長させる取り組みを今こそ早急に始めるべき時だ。

- コマースのチャネルを活発に使おう

ECの可能性を信じ、顧客に応じたさまざまなプラットフォームやECサイトを活用するよう戦略設計・再考を行ない、それを実践する必要がある。

- コンシューマーと個人関係を築こう

個々人の購入履歴とそれまでの経過はある程度把握できる。ここからデータシグナルを読み解き、マーケティングに活用することは可能だ。特に、ある条件に当てはまった場合のみ得られる特典などを通じて、エンゲージメントを高め、リピーター顧客化するよう促す施策も重要だ。

電通アイソバーでは、このようなグローバル市場で培った知見を生かし、データドリブンコマースに取り組む日本企業をサポートしている。

各種出典
https://99firms.com/blog/ecommerce-statistics/
https://www.statista.com/statistics/251666/number-of-digital-buyers-worldwide/
https://www.statista.com/statistics/534123/e-commerce-share-of-retail-sales-worldwide/
https://www.shopify.com/enterprise/site-performance-page-speed-ecommerce
https://think.storage.googleapis.com/docs/mobile-page-speed-new-industry-benchmarks.pdf
https://www.machmetrics.com/speed-blog/how-does-page-load-time-affect-your-site-revenue/

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