CX UPDATES

2020.6.08

アフターコロナにおけるオムニチャネル戦略の進め方

コロナ禍により大きな打撃を受けた小売ビジネスの企業にとって、今後の戦略をどのように立てるべきか、正に今検討が開始されていると思います。コロナによってもたらされた影響は、直近の売上減少だけではなく、消費者のマインドや購買行動そのものに変化を及ぼすパラダイムシフトとなりました。その中で、多くの企業にとって、eコマースの拡大がテーマとなってくることは間違いないですが、リアル店舗も無視できない大きい存在です。このチャネル間のバランスや顧客の購買行動変容を理解、予測しながら、アフターコロナのオムニチャネル戦略を練るのはどの企業においても大きなチャレンジとなるでしょう。おそらく、今まで掲げてきたオムニチャネルやeコマース戦略の中長期計画はより短縮された期間が要望され、そのプロジェクトの中身(要件)も変更を余儀なくされることが予想されます。コロナ禍を経て、一度それらの構想を振り返り現状のコロナによってもたらされた様々な影響を加味して、"進むべき道"を再検討する必要があります。

コロナ禍に対応できる組織とは

既にeコマースを運営している企業を対象として話を進めると、 通常であれば目標を決めて、それに向かって逆算して施策の計画を立てるというフローになるかと思います。しかしこのような未曾有の事態に直面し、先行きが読めない状況下において、”変化に機敏に反応し対応するフレキシブルな組織や目標”が必要となってきます。(開発用語でいうウォーターフォール型からアジャイル型への変更)そのため、今まで通り店舗とeコマースの目標を別々に立てるのではなく、今こそ、店舗とeコマースを併せた目標を掲げる必要があるでしょう。もちろんそこに紐づく評価や投資もあるのでハードルは高いですが、このようなフレキシブルに対応できる組織を実現するにはチャネル間で補完しあう企業文化の育成が必要となってきます。(組織や予算が分かれている限りはチャネルを飛び越えた施策を考えることは難しい)

再定義が進む店舗の体験

コロナ禍の外出自粛の状況下、多くの企業でeコマースの売上が伸びたのではないでしょうか?今回eコマースが一気に促進され、店舗でしか購入していなかった顧客も、欲しい商品の"比較の容易さ"や"いつでも購入出来る利便性"を体験したと思います。eコマースが促進されたことで、デジタルとリアルの体験がより比較され、アフターコロナでは店舗で提供できる顧客体験は何か?という店舗体験の再定義が起こってくると予想されます。

一方で、この状況下においてもその企業やブランドのすべての顧客がeコマースを利用したわけではありません。今回eコマースだけで店舗体験をカバーすることは難しいという発見もあったと思います。(すべての顧客の要望を満足させる体験提供は単一チャネルでは難しい)店舗体験はeコマースでは提供できない領域の補完関係にあるので、施策や体験を考える際に、どちらかに軸を置くのではなく、両チャネルの優位性を生かし相関性のある施策を考えるべき時期にあると思います。

デジタル化やDXの促進という文脈が今後のキーワードになってきますが、店舗をデジタル化することだけが顧客体験の提供に繋がるわけではありません。たとえばアパレルでいうと、試着してサイズを確かめたり、似合うかどうかを見極めることや、スタッフとのコミュニケーション、商品の特徴や人気度、コーディネート提案を聞いたり、実際に触れることで素材感を触感として感じることもeコマースでは出来ない体験なので、これらをどのようにブラッシュアップするか、”店舗体験をデジタルでどのように表現するか”という視点も必要です。一方で、店舗スタッフの活躍の幅も広がってきています。店舗の休業によって、自宅待機を余儀なくされたスタッフの中には、チャットやライブでeコマースの接客を請け負う販売員も生じてきました。中でもカリスマ販売員のようなコミュニケーションに長けている人材は、オンライン接客においてもその能力を発揮しているという結果がこの数ケ月で起きています。ECサイトに月1000万円超の貢献をする販売員も出てきており「オムニチャネル店員」などのワードも出てきています。今後、新規や改装する店舗のコンセプトとして、”ライブコマースやメディア発信を前提とした店舗”も出てきそうです。

今後のeコマースに求められる施策や機能

eコマース側に視点を移すと、eコマースは既に情報収集の容易さやショッピングの利便性を備えていますので、店舗顧客の需要に応える施策「店舗で出来る体験にいかに近づけるか」または、「デジタルを活用してリアル店舗と融合したサービスの開発」がテーマになってきます。その中でどのような施策がマッチするかは商品特性や売り方など企業によって異なります。施策としては、店舗スタッフによるオンライン接客(LIVEやチャット)やネットで買って店舗で受け取るBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)、店舗での試着予約機能、またECサイトだけをWEB上の販売チャネルとしないヘッドレスコマース*などが着目されています。
*ヘッドレスコマースとは、フロントエンド(UI)とバックエンドの機能を分割した構成のことで、フロントエンド開発の自由度があがり、顧客接点の拡大を可能にする仕組みです。(例:VRや Alexaのような音声デバイス、LINEなどをバックエンドのコマースシステムに繋げる)

コロナ禍で大きく変わった消費者の行動

出典:新型コロナウイルス 生活者の価値観・ 消費行動・働き方は どう変わるか, 株式会社ローランド・ベルガー

コロナ禍による外出自粛を機に変化した購買行動として、上記のチャートのように今までリアルで体験していた認知から購買までのプロセスが、既存や新出されるサービスにより"デジタルによる置き換え"が促進され、その新しいプロセスをある意味強制的な環境下で体験することで、"慣れ"が生じ"習慣化"することで、外出自粛解禁後もそのデジタルによる"リアルの代替えを求める傾向"は促進されるとみられます。認知・興味の場としてはSNSにも力を入れていく必要がありますし、購入意欲醸成では、販促LIVEやオンライン接客の取組みも検討しなければなりません。また、コロナが完全に終息するまでは店舗での滞在時間を短縮する為、ネットで先に商品を選び試着のみ店舗でおこなう、または購入後に受け取るのみという店舗の利用も加速することでしょう。

アフターコロナ対策の進め方

これらの傾向を踏まえアフターコロナに対応するべくやるべきことはたくさんありますが、焦りから目先のソリューションに飛びつくのは"企業やブランドで定義した一貫性ある体験を提供する"という目線では遠回りとなる危険性があります。まずは現状の立ち位置を分析、理解し冷静に対策を練ることが先決です。しかしながら、コロナ禍で今までよりもデジタル対応の需要が増してきているので、スピード感を持って進めなければなりません。よって、社内で多くの議論を展開している時間は無く、かつてないチャレンジを"どれだけ早く決断出来るか"が試されてきます。これからの3か年計画を立てる際も、直近1年でどこまで対応できるかが今後のビジネスを左右します。早くそして着実に進めるために、アフターコロナに向けた対策の進め方としては、以下のようなプロセスを一つずつ実施していく必要があると捉えています。オンライン・オフラインの垣根を超えた組織や役割を構築し、新たな企業文化を創造する、そしてそれを許容する仕組みを土台として整え、その上に分析に裏づけられた解を導きチャレンジングな施策を載せていく、そのようなプロセスが必要になってきます。

「1.横断型組織編制や役割の構築」の必要性に関して、

”変化に機敏に反応し対応するフレキシブルな組織や目標”を実現するには、新規部門やプロジェクトチームもしくは専門の人材によって、”既存の組織に捉われず組織を横断して動ける役割”を作る必要があります。(それぞれの部門長と直接対話し、ある程度の権限を委譲された経営層直下のチームや組織)既存のビジネスを理解している各部門のエキスパートを集め、出来れば兼任ではなく専任で新体制を任せたいところです。この役割は、eコマースとリアル店舗のビジネスのスキームの詳細を理解する必要がありますし、片方のチャネルの利害にとらわれず俯瞰的にみてサービスや施策を考えなければなりません。そのため、どちらかに所属していると評価や部門間のしがらみにより推進するのが困難になります。オンラインとオフラインの境界線を溶かし、顧客に新たな体験価値を提供するには内部(組織)から変わる必要があります。

「2.現状分析」「3.戦略策定」に関しては、

現在これを執筆している6月上旬時点では、期の途中ではありますが、このタイミングで再度戦略を練り直す必要があると感じます。ここまでのコロナ禍の影響による購買マインドや顧客のデジタルリテラシー向上を加味して、デジタル施策を加速することがベースになってきます。特に今は、店舗休業により店舗体験の抑制を顧客に強いており機会損失や離反が生じてもおかしくない状況下で、企業の戦略としては"既存の顧客"を「どのように維持・回復」し「購買モチベーションを上げるか」に集中すべき時期だと言えます。今回、初めてeコマースで購入した店舗顧客もチャネル共通顧客とすると、オンライン顧客とオフライン顧客、チャネル共通顧客と3種類に分けられます。オンライン顧客をオフラインへ、オフライン顧客をオンラインへ送客するような相互送客施策(フリクションレス)を実施して、共通顧客を増やしていく施策を考察する必要があります。「何%を共通顧客へ移行出来るか」を数字で試算するのは難しいですが、チャネル共通顧客が最もLTVが高いという結果は各企業よりレポートされています。未曾有の事態に陥っている現状のビジネスを向上させるには、それぞれのチャネルで別々の施策を実施するのではなく、チャネルを横断し、デジタルとリアルを意識させない施策(OMO)を実施することで、企業(ブランド)として一貫性ある顧客体験の提供を可能にし、未来継続的な売上の回復・拡大への基盤になるはずです。この機を、DX(デジタルトランスフォーメーション)やCX(カスタマーエクスペリエンス)戦略を導入する好機と捉え、アフターコロナの戦略を立ててみてはいかがでしょうか?

口脇 啓司 Keishi Kuchiwaki

プラットフォームコンサルティング部
エグゼクティブ プランニング ディレクター
アパレル業界を軸としてリアル店舗の運営から、大手ファッションECモール、外資アパレル企業のカタログ通販やEC責任者など、オフラインとオンラインの販売チャネルのマネージメントを経験。ECビジネス、オムニチャネル戦略やデジタルトランスフォーメーションプロジェクトなどデジタルに関する全社プロジェクトを責任者として推進。ECビジネスにおいては11年のキャリアを持つ。2019年7月より現職。

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