#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

〜顧客行動をデータ化するためのカスタマイズが重要〜

連載4回目では、前回までに定義したカスタマーアナリティクスならではの指標をタグマネージャーで実装する方法を紹介します。

実装方針は、以下の3つです。

ウェブサイトとユーザーのインタラクションを計測

伝統的な「アクセス解析」では、ページを読み込みした時点で計測される「ページビュー」という考え方が一般的でした。ところが、テクノロジーが進化した結果、Webサイトは静的な「ページ」というよりも、動的な「アプリケーション」ソフトウェアに近くなり、読み込んだ後のインタラクションが頻繁に発生するようになりました。たとえば、ページを読み込んだ後でも、マウスカーソルを重ねると画面の一部が切り替わったり、スクロールしてページ下部に近づくと新たなコンテンツが追加で読み込まれたりと、動的なインタラクションは様々です。

今までは、リンクやボタンのクリックを計測することも一般的でしたが、もはやそれだけでは解析データとしては不十分です。オンマウスやスクロールといった操作も対象としてユーザーがWebサイトと対話する状況を幅広く柔軟にデータ取得し、それらのインタラクションが発生する順番や継続時間、経過時間なども加味することで、顧客の行動や心理の変化を追いかけていくのがカスタマーアナリティクスの基本です。

そこで、カスタマーアナリティクスとの親和性が高いAdobeのタグマネージャーをフル活用しました。多様なイベントUI操作をきっかけとしてデータを取得するための機能が豊富に準備されているので、マーケターだけでもある程度の実装が可能です。

トリガーの例

「ウェブ解析士だより」の記事リンクの上にマウスカーソルを200ミリ重ねた場合のトリガーは

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

以下のように設定画面に記入するだけで実現可能です。

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

 

全ページに設置されたフッタ上の「先頭へ」リンクが2秒以上画面に表示された場合に精読イベントを計測するためには、

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

以下のように設定画面に記入します。

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

申込フォームで性別を選択した時に属性データを計測したい場合は、

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

以下のようになります。

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

その他にも、タブの切り替えやスマートフォンでの画面拡大、「どこどこ.jp」のような他に導入したサービスの処理完了JavaScriptオブジェクトの値変化なども、コードを書かずに指定できます。

段階的なリーン実装

何のデータをどう取得するのか綿密に設計実装してから一斉にデータ計測を開始するのが従来のアプローチです。計画を立てやすい、予定と実績の管理がしやすいというメリットがありますが、未知や不確定の要素が多いプロジェクトの場合、想定と違ったり、結果的に役に立たないデータを取得するために無駄な実装をしてしまったことが数ヶ月後になって判明するリスクがあります。

そこで今回は、アカウント発行後の即日に基本的なデータの計測を開始し、取得された実際のデータを見ながら徐々にデータをチューニングしていくという段階的なリーンのアプローチをとりました。

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

例えば、ページ名はURLのパス部分のみで計測開始しましたが、パラメータによって内容が切り替わるページがあるとわかった時点で、特定のパスの場合のみ特定のパラメータを残すよう設定を変更しました。

ただし、後で調べたりデータを補完できるような事前準備は必要です。具体的には、URLやパラメータは別のカスタム変数に格納しておきました。また、セグメントと計算指標を組み合わせることでコンバージョンを過去に遡って設定できるというAAならではの機能も重宝しました。

最初から綿密に設計したとしても予想外のデータが取れることがあるので、データありきの考え方です。初期のデータは不完全になるので、最初は開発用の領域レポートスイートを使ってデータを取得。ある程度データが整ってから、本番用の計測に切り替えます。

シンプル化した設計書

Solution Design Reference(SDR)と呼ばれる仕様書を作成することがAdobe社によって推奨されていますが、設定内容を常に最新に保つことが難しく、実際とかけ離れたドキュメントになりがちです。単に設定を一覧で確認するのが目的であれば、APIを使って設定内容を抽出し、エクセルに自動反映させた方が確実で楽です(というツールもあります:KAISEKI Assist)。

そこで今回は、ツールの設定内容をメモすることよりも、どのデータをどこでどのように取得するためにどう実装したのか、という情報を重視し、SDRへの記載項目を絞りました。また、共有しやすいよう、Googleスプレッドシートで管理していきました。

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

 

まず基礎的なデータを取得スタート

DTMの基本タグを本番サイトに設置し、開発用のRSでデータ取得を開始しました。Adobe Analyticsはカスタマイズが前提なので、基本タグのみのデフォルト状態では役に立つデータは取得できません。リーンで段階的な実装をするとはいえ、最低限の実装は必要です。

そこで、以下のような汎用的なデータを実装しました。タグマネージャを使えば、半日で実装できます。

基本的な指標

  • ページ
    • ドメイン
    • URLを短縮したページ名
    • ページタイトル
    • 読了ページ
  • コンテンツ分類
    • 第一階層
    • 第二階層
    • 「見つかりません」ページ
  • 流入元
    • リファラ
    • GA用各種utmパラメータ
  • 環境
    • 訪問年月日
    • 訪問日時
    • IPアドレス
  • 仮コンバージョン
    • 訪問開始新規
    • 訪問開始リピート
    • ページ読了

徐々に追加していったカスタム実装

基本的なデータを計測開始した後は、そのデータを見ながらチューニングやカスタム実装の追加を行っていきました。他のサイトでも活用できそうな例を紹介します。

コンテンツ分析用のカスタマイズ

WordPressで管理している定期コンテンツの分析をするため、以下のメタデータを計測するようにしました。

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

  • 作成者著者
  • 公開日
  • 経過日数閲覧日と公開日の差分の日数を都度計算して計測
  • カテゴリ複数の場合は分割してそれぞれをカウント
  • タグ複数の場合は分割してそれぞれをカウント

WordPressの編集画面に手を入れ、コンテンツ作成時に「想定読者」「目的」などを指定するようにしました。

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

このデータは、HTMLソース中のデータレイヤーを経由してタグマネージャーによって読み取られ、Adobe Analyticsへ送信されます。

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

こういったデータを取得することにより、以下のようなコンテンツ分析が可能になります。

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

顧客分析用のカスタマイズ

訪問者の行動の変化を長期で追いかけるためのスコアリング方法としては、ルールに基づく行為を行った時点でデータを収集する方法と、収集後にセグメントを作成する方法を検討しました。ルールを変更しても過去のデータを再処理できるという柔軟性がセグメント方式の利点ですが、「5点以上をクリアした人」といった複雑な条件による分析をアナリティクスのみで実現できなくなるというデメリットがあります。

そこで、データ収集を開始してからしばらくはセグメントを調整しながらルールを固めていき、その後にタグマネージャーを使ってルールに基づくスコアリング用のデータを収集する実装を行いました。

特定ページを閲覧した時にイベントとカウンターをセットするためのJavaScriptコード

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

特定ページの特定エリアを秒以上ブラウザ画面に表示させた場合の計測例

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

#4 リーンに進めるカスタマーアナリティクス実装

以上、カスタマーアナリティクス流のデータ取得方法について紹介しました。ページが表示される度にデータを計測するのはモノ視点の昔風のアプローチであり、顧客視点で、時間軸を加味しながら、行動や気持ちの変化を柔軟に取得することが重要です。昨今のタグマネージャーは単に共通タグを管理するCMSではなく、顧客がウェブサイトを利用する状況インタラクションをトリガーとしたデータ計測と、そのデータを各種ツールへ送信するという役割を担います。

次回は、いよいよ、計測されたデータを使った分析について具体的に紹介します。

#3 施策の効果測定を妄想分析しよう

〜分析を確実にアクションへつなげるために〜

前回は、企業(団体)と顧客のコミュニケーションのあり方を図解で整理するコンセプトダイアグラムの書き方を紹介しましたが、図を描くことがゴールではありません。ワークショップを通して合意形成しながら作成したコミュニケーション戦略マップも副次的な効果でしかなく、施策を企画・実施し、データ活用によってその効果を高めていくことが重要です。

コンセプトダイアグラムを作成後、大きく分けて以下の2種類の活用方法があります。
・具体的な施策を洗い出して終わるプロジェクト(下図の①まで)
・データを活用して顧客の変化を理解し、施策を評価する段階まで進むプロジェクト(下図の①と②)
 
#3 施策の効果測定を妄想分析しよう

① 施策の整理

企業が望む顧客の態度の変化をステップに分解し、その変化を促進するために行う施策を整理します。どのような状態の人に、どのように変化してもらいたいのかというベクトルがあるからこそ、その軸に沿って顧客を導くために企業が力を入れるべき施策について検討することが可能になります。既存の施策は、位置づけがより明確になり、実施すべき新規の施策が浮かび上がってきます。

施策のバランスを確かめる

まず、描いたコンセプトダイアグラムにおけるステップをつなげる矢印の上に、2〜5個程度の施策を重ねます。
 
#3 施策の効果測定を妄想分析しよう

下記の図のように、すべての矢印の上にバランス良く施策がプロットされている状態を目指します。
 
#3 施策の効果測定を妄想分析しよう

何となく実施していた施策は、その位置付け(誰にどうなってもらうための施策なのか)がクリアになります。施策をあまり実施していない矢印があれば、それで良いのかマーケティング戦略を見直し、重要度に応じて新規の施策を検討します。

施策が思い浮かばないということは、そのステップ間の変化を促進するために企業としてできることがないということなので、ステップ自体を見直します。企業として打ち手がなく、外部要因によって発生するのを見守るしかないようなステップは、コンセプトダイアグラムの中に含める必要はありません。

施策の位置づけを表で整理する

前述のように図中の矢印の上に施策をプロットするのは、全体のバランスを確かめつつコンセプトダイアグラム自体の精度を高めるためには便利ですが、詳細にまとめることが難しく、複数の施策間のつながりも見えにくくなりがちです。

そこで、以下のようなフォーマットを用いて、施策を分解しながら詳細を整理していきました。
 
#3 施策の効果測定を妄想分析しよう

誰にどうなってもらうため、という目的(Why)を意識しながら、何(What)をどこで(Where)、どのように(How)、実施する施策なのかを明確にします。

この表の施策の行を右方向に見ていくと、まずTwitter広告でターゲット顧客をサイトに誘導、コンテンツに接触することで、スキルアップしたいという気持ちを強める、というように前後の施策のつながり(=ストーリー)が見えてきます。そのため、前後のつながりや流れを見ながら、顧客視点で施策を考えたり調整することが可能になります。
 
#3 施策の効果測定を妄想分析しよう

② 施策の評価

データによる施策の効果測定を行う場合は、表の一番下に、施策の効果を評価するために見るべきデータを記入します。施策の内容や狙いを見ながら、それらに応じた指標を検討します。
 
#3 施策の効果測定を妄想分析しよう

指標の種類は、量的指標と質的指標、結果指標に分けて考えました。

量的指標:
インプレッションやリーチ、Webへの訪問者数など、施策の対象になった人の人数を表す指標
質的指標:
コンテンツの精読率や途中ステップへの到達など、結果に至るまでの過程のスムーズさや進行具合を表す指標
結果指標:
施策によって起こしたい変化が起きたのかを表す指標

以下のように、具体的なレポートをイメージしながら指標を検討すると良いでしょう。
 
#3 施策の効果測定を妄想分析しよう

この時点ではまだアナリティクスの実装を行なっていないので、それっぽいダミーの値を入れます。ダミーの値が実際の値だと仮定して、どんな考察が可能になるのかを妄想しながら分析すると、指標の有用性を実装前に検証できます。

妄想分析の例:

このレポートは3月の1ヶ月間に新規の見込み顧客を獲得できたチャネルを評価し、予算配分を最適化するために作成した。

自然検索経由でサイトに初めて訪問した人の3ヶ月間の行動を追いかけたところ、質的指標がまんべんなく変化を起こしていて、申込みにもつながっていることがわかった。ただし、初級よりも上級やマスターの検討に至る人が多いため、既に初級や上級を保有している人、または資格は保有していないが中級者以上の層が、協会や資格を認識している状態で、サイトに訪問する際の手段として検索エンジンを利用しているようだ。

一方、ソーシャル経由の新規訪問者は申込につながらないだけでなく、検討系の数値も低いが、初級アクティブと上級アクティブの数値が高いことから、既に初級や上級を保有している人がソーシャル経由でサイトを訪問している可能性がある。普段はデスクトップでサイトを閲覧していて、スマホのSNSアプリに内蔵されたブラウザで初めてサイトを訪問したのかもしれない。利用OSやブラウザ、リファラなどでクロス集計すれば、この仮説は検証できそうだ。

いずれにせよ、新規の獲得を狙った施策の分析レポートに既存会員が混ざってしまったのは問題だ。ログインやお知らせメールクリックなど、既存会員が行うアクションを行ったユーザーを遡及的に除外するようセグメント設定を調整してから、もう一度分析してみよう。リスティングに関しては、既存を除外するための調整を検討したい。

このように想像力を働かせながら妄想分析した結果、何らかの意思決定や改善アクションにつながる有益なヒントが得られそうであれば、このレポートで使われている指標を取得するためのアナリティクス設計や実装にコストをかける価値があると判断できます。

今回は、分析で役に立たない指標を実装してしまうことを避けるため、設計前の段階で複数の分析ニーズを洗い出し、分析後に誰がどんな意思決定をするのかをイメージしながらダミーデータを使ってレポートのプロトタイプを作成しました。

次は指標を取得するための実装へ

ここまでで、図解による「ビジネスの理解」と、描いたコミュニケーション戦略に基づく「施策の企画/実施」、さらに施策を評価するための「指標定義」が終わりました。
 
#3 施策の効果測定を妄想分析しよう

この後は、役に立つと事前検証できた指標を取得するために、タグマネージャーを使ってAdobe Analyticsの実装を進めていきました。詳細は次回に続きます。

#2 アナリティクスの要件定義は図解が効果的

〜図解によってわかったこと〜

今回から、ウェブ解析士協会へのアナリティクス導入プロジェクトを実際にどう進めたかについて具体的に解説していきます。最初に、要件定義としてのコンセプトダイアグラム活用について、ご紹介します。

ウェブ解析士協会のウェブサイトにAdobe Analyticsを導入するにあたり、計測して分析する指標を定義するために、コンセプトダイグラムを作成することになりました。データをビジネスで活用するためには、戦略や戦術を踏まえた上で、追うべきデータとその活用方法を定義する必要があります。ウェブ解析のツールが標準的に提供する「ページビュー」「セッション数」「直帰数」といったシステム都合のデータだけでは、有意義な意思決定にはつながりません。そもそも、ウェブ解析のツールはウェブ上の行動データという限定的なデータしか取得できません。それ以外にどんなデータを統合する必要があるのか、という広い視点で現状と理想をコンセプトダイアグラムを作成する過程で整理しました。

まず、ターゲットユーザーが何を価値と感じているのか、そして協会の役割など議論を繰り返しながら「ウェブ解析士」という資格制度の現状、目指す方向性、課題を整理しつつ、出来上がったのが以下の図(コンセプトダイアグラム)です。

#2 アナリティクスの要件定義は図解が効果的

図解において込めた意図、改めて再認識できたこと、得られた発見についていくつか紹介します。

 

■理念や優位性を意識したビフォーアフター

まず、どんな状態の人にどうなってもらいたいのかを考え、スタート地点とゴールを定義しました。

#2 アナリティクスの要件定義は図解が効果的

「会員を増やす」「売上目標を達成する」などは中間的なゴールでしかないので、企業理念や存在意義、競合との優位性を意識しながら長期的なゴールを設定しました。

また、カスタマーアナリティクスでは顧客に自然で心地よい体験を提供することが重要なので、「解析(って)いいね(と漠然と思う)」「活躍する」と、顧客の視点でスタートとゴールを表現しました。

ただし、顧客のニーズだけでゴールを決めてしまうと、企業のパフォーマンスを評価しにくくなってしまいます。そのため、企業(団体)として望む顧客の最終状態を顧客視点で表現することが重要です。

スタート地点の「解析いいね」は、就職または転職を意識している人が様々な業界や職種を検討する中で、「伝統的なマーケティングよりもデータ系の方が将来性がありそう」「クリエイティブに限界を感じているので分析・解析の道に進むのも良いかも」等と可能性を感じ始めた状態を簡潔に表現しました。

ゴールに「顧客視点の」と入れたのは、専門知識を振りかざすのではなく、データを活用しながらクライアントやその先の顧客(消費者)を理解し、寄り添う形で提案ができるような人が増えて欲しい、という運営側の想いを表現しました。その想いがあるからこそ、ウェブ解析士のプログラムは単なる解析ツールの使い方を超えて、戦略や顧客を理解するための考え方や手法が大きく取り上げられています。

また、「解析士として活躍」と表現したのは、転職やキャリアUPのために資格を取ることを目的とするのではなく、得られた知識とスキルを実際に使い、成果を出せるようになってほしい、という想いを込めました。

 

■顧客の態度変容を要因で分解する

スタートとゴールを定義すると、企業として推進すべき顧客の変化が明確になります。どんな状態の人にどうなってもらいたいのか?それをさらに具体化するため、何が高まるとゴールに近づくのか、という変化の要因を縦と横の軸で分解しました。#2 アナリティクスの要件定義は図解が効果的

理想と現状のギャップ、課題を踏まえて設定したのが「人とのつながり(の強さ)」と「実力・実績」です。ウェブ解析に興味を持った人がコミュニティに参加し、仲間を見つけて共に学び、影響を与え合いながらレベルアップしていくのが横軸、学び、実践しながら実力を高めていき、それに伴って実績も増えていくのが縦軸です。

縦横の両方の要素が高まらないと、ゴールに到達することができないことを確かめながら、ゴール到達のための要素を十分に異質な2つの要素に分解することが重要です。たとえば「人とのつながり」だけが増えて、実力が伴わない人は、単なる「人脈だけの人」になってしまいます。逆に「実力・実績」は優れているのに人とつながらない人は「孤高の研究者」になってしまい、活躍の場が制限されてしまいます。一方の軸だけを振り切った状態を「ピットフォール(落とし穴)」として定義し、図の上に書き込むようにしました。

この2つの軸をどう設定するかには、企業として顧客をゴール達成に向けてどう導くのか、という意味でのコンセプトが色濃く反映されます。

つまり今回は、ウェブマーケティング関連の資格制度がいくつかある中で、ウェブ解析士の特徴は、

  • 顧客視点を重視する
  • 実務で役立つ実践的な資格である
  • 仲間と学び、対話し、協業できる

という点がユニークな特徴であり、課題でもある、ということをゴールと軸で表現しました。

 

■顧客のストーリーを物語る

ゴールと軸の設定によって、企業(団体)が望む顧客の変化が明確になりました。

次は、その変化を起こすために、企業として顧客をどのように導くのか、というストーリーを具体化します。そのストーリーの中で、企業が行う各種の施策(集客やコンテンツ、接客など)が位置付けられるはずです。

そこで、顧客の行動や気持ちの変化を「ステップ」で分解し、矢印でつなげることでストーリーを組み立てていきました。

#2 アナリティクスの要件定義は図解が効果的

顧客視点で表現し、自然な流れを作るために、主語を顧客にしています。また、起こしたい変化を明確にするため、「訪問」「申込」「購入」といった手段としての行動ではなく、その手段の先にある目的としての行動や気持ちの変化をステップにするようにしました。

スタート地点の「解析いいね」は、就職または転職を意識している人が様々な業界や職種を検討する中で、「伝統的なマーケティングよりもデータ系の方が将来性がありそう」「クリエイティブに限界を感じているので分析・解析の道に進むのも良いかも」等と可能性を感じ始めているけれどもアクションを起こしていない状態です。そういった人たちにメッセージを伝えて意欲を高め、「実際に解析を学んでみたい」という意欲を高める必要があります。その結果として、書籍を購入したり、ウェブサイトで検索したり、セミナーに参加したりするはずです。その選択肢の中で、ウェブ解析士も検討してほしい、というのが企業(団体)が望む顧客の変化です。

次のステップは、単なる「資格取得」ではなく、「学びながら資格取得」としました。「就職対策で資格を取るだけ」というよりも、実力をつけて実務に活かしてほしいので、「学ぶ」という行為を強調しました。

箱の位置は、軸を意識しながら縦または横へ移動させていきます。右端、左端、上限、下限の位置にも留意します。

#2 アナリティクスの要件定義は図解が効果的

「学びながら資格取得」というステップでは、独学の人もいるかもしれませんが、同僚と一緒に学んだり、疑問点を人に聞いたりすることもあるはずです。そうであってほしいので、仲間と学べる機会を運営側としてはなるべく増やしています。そのため、箱の右端は横の軸が進んでいると解釈し、右方法へ延長しています。

このようにして、ステップを繋げてゴールに到達できるようなストーリーを具体化しました。

#2 アナリティクスの要件定義は図解が効果的

 

■顧客のステージを定義

資格制度の企画・運営では、受講者を増やすだけでなく、資格を取得した後のフォローアップも重要です。今回は「カスタマーアナリティクス」として、CRMのように顧客一人ひとりを軸とした分析を行いたいので、ロイヤルティの物差しとして「ステージ」を定義しました。

#2 アナリティクスの要件定義は図解が効果的

コンセプトダイアグラムのステップとの関係も図の中で明確にしました。

#2 アナリティクスの要件定義は図解が効果的

各ステージにいる人たちの人数や進み具合を確認できれば、資格制度のパフォーマンスを「申し込み人数」「合格者」「満足度アンケート」などのデータよりも細かく把握できるようになります。また、リアルタイムで判定できれば、ターゲティングやオートメーションも可能になります。

 

■コンセプトダイアグラムとカスタマージャーニーマップはどう違う?

今回は「コンセプトダイアグラム」という手法を使いましたが、同じく顧客視点でユーザーを可視化するフレームワークとしては「カスタマージャーニーマップ」も有名です。最適な顧客体験を提供するために行動と心理の変容を整理するという点は同じですが、カスタマージャーニーマップでは、企業とのタッチポイントごとの課題と打ち手を顧客視点の時系列で整理します。一方、コンセプトダイアグラムでは、企業が望む顧客の態度の変化を軸としてステップに分解し、その変化を促進するために行う施策の位置づけを明確化するという点が大きく異なります。コンセプトダイアグラムはまた、顧客の行動と心理の長期的な変化をデータで可視化し、施策の効果を測ることができる分析フレームワークでもあります。

 

次は施策の整理とレポート設計

この後は、このコンセプトに基づいて、計測して分析するべきデータの定義と、行うべき施策の洗い出しにつなげていきまました。つまり、図解をベースとしたアナリティクスの要件定義です。詳しくは次回に!

「#1 カスタマーアナリティクス実践プロジェクトスタート!」

~”カスタマ-アナリティクス“を中心したウェブ解析へ~

デジタルの浸透によって、顧客に関わる様々なデータを取得できることが可能になり、データを活用し最適な顧客体験を提供することが可能になりました。その体験や、体験によって生み出される価値が企業やブランドの差別化において重要な意味をもたらします。
電通アイソバーでは、CAO(Chief Analytics Officer)の清水誠を中心に、徹底した「顧客中心」の考え方をマーケティングに反映させるために、デモグラフィック属性・サイコグラフィック属性・ビヘイビア属性を含むオンラインとオフラインのデータを統合し、360度視点で顧客を理解する「カスタマーアナリティクス」を提唱・実践しています。

#1 カスタマーアナリティクス実践プロジェクトスタート!

■プロジェクトスタートの背景

電通アイソバーでは、清水誠が提唱した、企業と顧客のコミュニケーションのあり方を整理しデータに基づくマーケティングを可能にするための図解手法である「コンセプトダイアグラム」を活用し、企業のマーケティング施策の設計や効果測定、PDCAサイクルの改善などを行っています。

この「コンセプトダイアグラム」が、顧客視点の解析士を育成・活躍する場を提供している「ウェブ解析士協会」の2017年版上級ウェブ解析士のテキストや課題内容において、中心的な役割を果たすことが決定。

同時に、ウェブ解析士協会と協力しながら、清水誠を中心に電通アイソバーが提唱する、徹底した「顧客中心」の考え方をマーケティングに反映させるための「カスタマーアナリティクス」の方法論や考え方も、同協会が運営する資格制度「ウェブ解析士」に反映させる取り組みを進めることになりました。

このような流れをうけて、電通アイソバーでは、清水誠をリーダーとしてウェブ解析士協会と協力しながら、“ウェブ解析士協会による活動そのもの”を題材として、カスタマーアナリティックスプロジェクトを実践するプロジェクトが立ち上がることになりました。

#1 カスタマーアナリティクス実践プロジェクトスタート!
図2. プロジェクト運営体制図

■プロジェクトの進行について

プロジェクトでは、ウェブ解析士協会の団体と会員の間のコミュニケーションのあり方を「コンセプトダイアグラム」を活用して整理。それによって必要性や重要性が明らかになったコミュニケーション施策を実現すべく、ウェブサイトのリニューアルやメールによるコミュニケーションの改善、業務プロセス変更などの提案を行っていきます。また、資格を取得した協会会員の継続や活躍状況をデータでビジュアライズするダッシュボードを作成。そこから抽出されるビジネス課題を深堀分析するために、アナリティクスから得られるオンライン上の行動データとオフラインデータを統合していきます。

ツールとしては、Adobe Analyticsをカスタマイズしてフル活用。得られるデータやノウハウは、ウェブ解析士のテキストでも事例として取り上げ、ハンズオンの実習やセミナーでも利用できるよう、調整を進めています。

■実際の流れにそったリアルな事例に

カスタマーアナリティクスの普及のためには、課題やメリットを羅列したキレイな事例だけでは不十分です。そこで、実際のプロジェクトの流れに沿って、リアルで具体的な情報を発信していく予定です。

#1 カスタマーアナリティクス実践プロジェクトスタート!
図3.カスタマーアナリティクスの流れの図