ピクサー流に学ぶ

2月にもなって、正月の話もなんですが。。。
今年は、正月休みに、久しぶりに親子で映画館に足を運ぶことが出来ました。
親子で見られる映画ということで、「ベイマックス」を見に行ったのですが、見終わってから、これってピクサーの映画だったっけ?とエンドロールをジーッと読み込んでしまいました。
細部まで無駄無く、観客を引き込むストーリーを紡ぐために練り込まれた演出は、過去のピクサーの作品に相通じる、隙のない完成度を感じさせるものでした。
おまけに、ロボットと少年の友情の話かと思っていたら(実はドラえもんのようなストーリーかと思って見に行っていました)、ヒーローものの原作が題材。
ディズニーらしからぬ、ストーリー展開でしたが、これは、ディズニーがマーベルを買収した後の、マーベルの原作を最初に採用した作品ということで、さらに驚きました。
そんな意外なこの作品は、ディズニースタジオの制作ではありますが、数年前にピクサーがディズニーに買収されて以降、彼等のノウハウがディズニースタジオに移転された結果、「アナ雪」に続く大きな成果として、高く評価されているようです。


さて、そんな折、ちょうど年末年始にかけて、ピクサーの社長である、エド・キャットムル氏の書いた、「ピクサー流 想像するちから」という本を読んでおりました。この本は、私が「ベイマックス」を見て感じたことの秘密を解き明かす本であり、さらに、当社のように、課題解決のためのアイディアを提供することを生業とする会社にとっては、組織作りのためのヒントを与えてくれる本でもありました。

ピクサーというと、監督でもあり、クリエイティブの責任者である、ジョン・ラセター氏がまず思い浮かびますが、キャットムル氏は、元々コンピュータ・サイエンスの側からアニメーションの世界へ入ってきた方で、コンピューターで如何にかつてのディズニーが描いていたようなアニメーションを創り出すことが出来るのか、ということを追求し、さまざまな技術開発で現在のアニメーション業界の発展に貢献をしてきた方です。
クリエーターというよりは、学究肌で、物事の真理を追い求める探究心に溢れた方というのが、この本からの印象です。
そんな彼が、ピクサーを長年率いてきて、創造性を生み出す組織を育むにはどうすれば良いか、ということについて、自らの経験と考えを披露しています。
この本の中では、創造性とは何かということ自体に着いては、あまり具体的な言及がありません。変化に対応することそのものが、創造性である、といった言い方をしているように、彼自身は、創造性というものを非常に広く捉えていて、あらゆる人にとって、発揮しうるものだと考えています。そして、組織が持続的に創造性を発揮できるようにすることが最も重要だと主張しています。

アイディアについても、彼はこう語っています。
アイディアは独立していない。何十人もの人による、何万もの決定を通して、少しずつ発展するものだ、と。
映画にしても製品にしても、一つのアイディアから成立しているものではなく、たくさんのアイディアからできているものであり、それらは、組織による集合知から生み出されるのだと言います。
ピクサーの作品も、のべ何百人というスタッフが関わる中で、様々なアイディアを組み合わせ、ブラッシュアップさせながら、今、我々が目にするような形になってきたわけです。

では、そうしたアイディアを生み出し、発展させるための組織はどうあるべきなのか?これについては、この本の中で様々な考えが述べられています。その中の一つを紹介すると、
リーダーの本当の謙虚さは、自分の人生や事業が目に見えない多くの要因によって決定づけられてきたこと、そしてこれからもそうあり続けることを理解するところから始まる。
組織を率いるもの(もちろん構成する人たちもですが)は、不確実性を前提として、物事に対処しなければならないということであります。
これは、デジタルの領域で急速な環境変化をどう活かすかを考えている者にとっては、大変に腹落ちするメッセージではないでしょうか?

謙虚であることは、この本の全体のトーンにも感じられる(翻訳なので原書でどうなのか、は分かりませんが)ほど、一つのテーマになっているような気がします。

ピクサーでは、映画の製作プロセスの中に、「ブレイントラスト」と呼ばれる、社内スタッフによる制作中の作品の評価をする会議があり、この本の中でも、繰り返し登場してきます。社内のベテランを中心に、その制作に関わっていない人も含めて参加し、率直に意見を交わし、それを通じて、駄作を傑作へと導いていきます。ここで重視されているのは、「率直さ」。人は、さまざまな価値観や経験を背負っているので、どうしても発言にはバイアスがかかってしまう。実は率直に意見をいうというのは、大変難しい訳です。ここでもそうしたことを理解しながら、率直な意見を交わすための謙虚さが求められています。

とかく成功者の回顧録には、自信に満ちた言葉ばかりが溢れているものですが、そうした類書とは一線を画すこの本は、同業の方々に、是非手に取っていただきたい本でした(当社のライブラリーにも購入しました!)。